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​嫌われ松子の正月

​2006嫌いな事への挑戦のスタート

本日、2007年、1月2日。
太郎子と次郎子を連れて、北海道の田舎の実家に帰省して4日目を迎える。
さて、20代、元旦に開いている居酒屋を探してまで行っていた高校の仲間との飲み会も、30代になると、元旦を避けるようになり、2日に集まるようになった。
今年も私は、2日には出かける気満々でいた。
ところが、『40』の声を聞くと、みんな急に落ち着いてしまうものなのだろうか。(40、、、うわー、嫌な響き)
普段なら「帰って来てんのー」と、馴れ合い口調でかかってくる電話も、今年は鈍いというより、はっきり言ってかかって来ていないではないか。
かといって、私は自分からかけるタイプでもない。
よく、自分が帰って来たからと言って、自分のために沢山の人を集める人がいる。
いろんな意味で、すごいな!と思う。
だが、往々にして自信過剰な人が多い。
だからと言って、みんながかかってくる電話を待っていたのでは、始まるものも始まらない。
恋愛と同じだ。
『みんなに会えば、ホノルルマラソンの話が自慢出来たのにな?。
きっと、目ん玉飛び出すに違いないのにな?。』
と、心の中で想像している自分も何とも滑稽である。
しかし、どうやらそんな自慢もできずに、明日、札幌に戻る事になってしまいそうな気配だ。(ついていない人生)×(孤独)=私 みたいな方程式は普通なので、今更驚きはしないが、40歳の誕生日が近い事が、虚無感を増している事は間違いない。
私の会社はそれほど大きくも小さくもない、札幌の芸能プロダクション事務所だ。
登録している人達の中からスーパーのチラシのモデルから地方局のテレビレポーターを斡旋している。
以前、育て上げたイケメン少年がオーディションでアイドルグループに入り、レコード大賞新人賞を獲ったことだけが自慢だ。
私はそこのプロデューサーと言う名の雑用係をしている。
その会社のスタッフから大晦日に、いきなりメールが入った。
男の歳は、30代前半。
パソコンいじるのが趣味で、それをそのまま仕事にしている。
ところが、過去は有名なホストだったらしいから、相当に何かで屈折したに違いない。
とにかく私が把握しているこの男は、人と話さない。
たばこ以外、口を開かない。
めったに立たない。
だから、歩いている所も、殆ど見た事がない。
そして、私とは会話しない。
私には笑顔を見せない。
そんな男のメールはこんな内容だった。
「関係ないですけど、僕、昔、ビルの階段や公園でブレイクダンスしてました。」
ぶっはー。
私にとっては、年末のお笑い番組をはるかに超えていたほどの衝撃だった。
私はこう返信した。
『うさぎが鳴きました。
ギャハハーギャハハーと鳴きました 。』
「そんなに元気に鳴くうさぎがいるのですね。
関係ないですが 、学生の頃のボウリングの最高スコアは、280ちょっとでした。」
メールでもあまりコミュンケーションが取れない…脈略が全くない。
それにしても巷では聞いた事のないハイスコア。
どおりで人を馬鹿にしているわけである。
『き○がいちゃんですね。。。。』
よく分からないが、これは彼にとっての年末の挨拶だったのだろうと、私は解釈した。
元旦の夜、どうにも刺激足らずになった私は、「よし、カラオケに行こう!」と、行動に出た。
実家の近くに、セガが出来たのである。
1年前の私であれば、当然ながら車で行く距離である。
「そんな私が懐かしいわー」と思いながら歩いた。
2分20秒で着いた。
「会員証はお持ちですか?」
「いいえ初めてです。」(こういう時、私はとても謙虚である。)
「何名様ですか?」
「1人です。」(こういう時、私はとても爽やかである。)
恥ずかしい顔は厳禁だ。
同情されてしまったらアウトだからだ。
いかにも「歌を職業」にしているかのように見せれば、1人カラオケも納得してもらえるだろう。
「元旦から、歌わなきゃならないのだから、実は辛いのよ」モードを醸し出せば、完璧だハハ。
しかも、歌っている所は、誰にも聴かれないのだから、音痴であろうがなかろうが、そこの所までは好き放題に自分で演出できるわけだ。
そして、お部屋に案内してくれる店員さんの後を付いて行く時の私は、たぶん誰が見ても可愛い。
プラス、どこか運動会の行進のように、店員さんの後を付いて行っている私がいる。
いわゆる、わくわくさを隠しきれてないに違いない。
最後に、椅子に腰掛け、店員さんに飲み物を聞かれると、本来の上品さを醸し出し、「じゃあ、ビールで」と、得意の18番の表情で微笑みかける。(18番、、、、死語かもしれない。)
このような展開を踏みながら、私は、実は、一人カラオケを札幌でも実践している。
身内以外は知らない事実である。
いや、そんな小細工な演出に、私が全エネルギーをかけている事は、身内さえも知らない。
歌い終わって、部屋を出て会計する時には、また2回目の難関を突破しなければならない場合が多い。
店員さんが、最初の人と代わっている事が多いからだ。
その人に『えっ、この人、1人だったの?3時間も?』と、思われるからだ。
この日は、正月料金で妙に高く感じ、2時間で退室した。
時刻は、まだ21時。
カラオケを出た私は、一人、ベンチに座って、ふと首を左に向けた。
すぐ横に、ボウリング場があった。
ボウリングのピンが次々と倒れる音。
ガヤガヤとした楽しそうな歓声。
盛り上がってやっている風景が、目の悪い私にぼんやり見える。
ボウリング。。。。
1人で・・・ 危ない危ない、さすがに自分にブレーキをかけた。
自分のためではない。
両脇のレーンの人に、『同情』という気遣いをさせるのが元旦から申し訳ないからだ。
申し訳ない申し訳ないと思って、1人で投げ続けるのも、忍びない。
しかも、私の120そこそこの実力では、どこから見てもボーラーには見えない。
カラオケと違って「元旦から、投げなきゃならないのだから、実は辛いのよモード」は、醸し出せない。
諦めて、帰宅した。
帰りは、痴漢に襲われないように、テキパキ歩いたせいか、1分50秒で着いた。
ところが、ふと思ってしまった疑問。
ボウリングのパーフェクトスコアって、200じゃないか?? 280なんて有り得ないだろう。
ぷっ。
あの男、間違っている。
そして、確かめりゃいいものを、280男にメールしてしまった。
『180の記憶間違いじゃないのん?』(私は自信たっぷりだった) 「周りに聞いてみては、いかがでしょう」(冷ややかな返答) 失敗したなと思ったが、3人の男にメールで聞いてみた。
1人目は、昨年、お笑いコンビ『ロンサム ウマ ボーイ』だかを結成して、そのまま芸能界入り出来ると勘違いしている20才の男。
2人目は、元スタッフのおかまっぽい『ルビー』ちゃん。
名付け親は私である。
面接した日に名付けた。
チラシなどの広告制作として働いてもらったが、子どもが出ている広告に「無洗米」を「無精米」と書いて自ら辞職していった。
3人目はTV局の自称、変態プロデューサー。
「ボウリングのパーフェクトスコアって、200?300?どっちだっけ?」
くだらない話ほど、メールというのは、このうえなく便利だ。
1人目の男「僕の最高は180です。」
2人目の男「170前後くらいかしら。」
3人目の男「ハイスコアは160かな。大学の時だね。」
3人が3人、みんな、自分のハイスコアを言ってくる。
『はー? ちゃうちゃう。あんたの最高スコアを聞いてるんじゃないの。パーフェクト、パーフェクト!のスコアを聞いているのよ?。』
3人目の男「あれ、去年はフルマラソンだったから、今年の目標は、ボウリングですか?」
自称、変態プロデューサーである。
んなわけないだろう!!
いったいこの男、どこまで変態なのかは知らない。
しかも、私の持論だが、変態は『変態』と言われる事に、妙な満足感を抱いている人が多い。
というのは、うちのモデルにストーカー行為をして出入り禁止になった自称フリーカメラマン(推定年齢50歳くらい)に、 『松川さん、一度でいいので、耳元で “変態ですね。。。”と、囁いてほしい』と頼まれた事がある。
私は何でも屋じゃなーい!! 世の中変態だらけ。言ったら最後。
こっちが変態の仲間入りである。
結局、300が正しい事は分かった。
ボウリングで、300を目指す。。。?
この私が?馬鹿げている。。。
と思いながらも、ちょっと考えてみてしまうのだから、ノリやすい性格である。
280男からは、それっきりメールはこない。
今年の年末、また何か関係のない話をメールしてくる事を待とう。
いや、1年かけて、私からメールを打ってみるのもいい。
「関係ないですが、私のボウリングの最高は、290です。」と。

ここで「まえがき」開始

2007年の私の目標。
2006年の「嫌いな事への挑戦」から、2007年「不可能な事への挑戦」と、決意している。
2006年の「嫌いなことへの挑戦は」とは「走ること」だった。
会社から歩いて1分くらいのところに、右に行けばコンビニがある。左に行けばクリーニング屋がある。私はどちらに行くにせよ、歩いて行こうか、車で行こうか真剣に悩んだ挙げ句、結局車で行く女だ。
そんな女が、一発奮起して、6月から走り始めた。
そして目標をいきなりホノルルフルマラソンに置いたのだ。
周囲の誰もが驚いた。まだ走ってもいないのに、フルマラソンに出ようと思っているという話をしただけで面白がられ、それを話題に2時間は酒が飲めた。
今、フルマラソンを走り終えて、42.195を走り切った辛さよりも、休みなく奴隷のように働いている私にとって、練習する時間を絞り出す事が辛かった。仕事の合間を縫って、ワンピース姿に靴だけをスニーカーに履き替えて、羞恥心を捨て街中を走り回って練習としていた『チンドン屋のような自分の姿』が涙ぐましい。
確かに、ボウリングで300を目指すというのは、不可能という意味では、やりがいもありそうだ。
しかし、ホノルルマラソンにかかった30万近いツアー代と、ボウリング場に投資するお金と、一体、どっちがかかるのだろうという疑問が湧いた。
何となくだが、チリも積もれば、ボウリング代の方がかかりそうな気がする。
しかも、1年頑張ったとして、周囲の男が越えていない200を越せたとして?、280男を目指すのは、限りなく不可能な事くらいは、バカな私にも当然分かる。
メールを返信した。
自称、変態プロデューサー様
『無理です』
「じゃあ、今年は、作家デビューを目指したら?」
ぶっはー。作家?
実は私は、勝手に自分の寿命が短いと思い込んで生きている女だ。
私の母は、私にいつもこう言いながら育てた。
「お母さんは長いことないからね」と。
一人っ子の私にそんな寂しい事を言う目的が分からない。
そんな私の母は、なぜか立派に長生きして、若い時よりも元気だ。
私はその血をしっかり受け継いでいる。
そんな訳で、いつ死ぬか分からない私は、たまに伝えたい事、自分のやりたい事を、会社のトイレに貼っている。
そして、ファイルして残すようにしている。
私が死んだ時に、「これがお母さんの考え方だったのよ」と、子供達に残して、思い出しては泣いてもらいたいからだ。
そのトイレ紙を、自称、変態プロデューサーが、うちの会社に来て何度か見ているせいだろう。
そして今、私に「作家になったら?」と、からかっているのである。
ん?ちょっと待てよ?
この、自称、変態プロデューサー、まさか、自分が変態なのではなく、変態をプロデュースする方のプロデューサーだったら、私は何?変態?
私がフルマラソンを走ったと言えば、知らない人は、「へー、松川さんって、マラソンが好きなんですね」と言ってくる。(とんでもない)
だから、私は、わざわざマラソン話をブログで書き上げたのだ。
で、書き上げれば、「へー、松川さんって、ブロガーだったんですね!」と、言ってくる。(とんでもない)
一人っ子で育った私は、たぶん他の子よりも、会話の数が明らかに少なかった。
そのせいか、周りが何を言っているのか分からない事が多かった。
子供ながらに、自分の知能が遅れているのではないかと心配したりした。
親は、早生まれのせいだと、私をなぐさめてくれた。本もあまり読まない。
読むと影響を受けすぎて、しゃべらずにはいられなくなるのだ。
言わないでおこう、言わないでおこう、と思っても、その本の世界に他人を引きずりこんでしまう癖が私にはある。
昨年読んだ『国家の品格』、劇団ひとりが書いた『陰日向に咲く』は、貸して下さいとも言われてないのに、隣人に貸しまくったりした。
強引に借されてしまった人は、私の事を、本好きに見えたに違いない。(とんでもない) 作家デビュー。。。。。。
変態プロデューサー様 『いくら不可能な挑戦と言っても、不可能なままで終わったら、フルマラソンのようなストーリーにならへんのである』。
「やってみなきゃ分からないじゃない」 そう言われたのが、実は、昨日の事である。
昨日言われて、ついついここまで書いてしまった。
なんと、ノリやすい性格なんだろう。
しかも、変態にまんまと、ノセられてしまうのか?
書くのは疲れる(走るのは疲れる)
そんな暇はない(そんな暇はない)
書いたところで(走ったところで)
何を得るのだろう(何も変わりはしない) だいたい、完成したところで(完走したところで)
誰か感動してくれるのか? (身内だけだな)
挫折が目に見えている。(見えている)
これほど不可能な事への挑戦に、私は足を踏み入れるのか?(入れるのか?)
子どもながらに自分の知能が遅れているのではないかと心配した女が今、いったい何を書くというのだろう。

トイレ紙 #01

会社にヤクルトのおばさんがやってくる
暑い中、寒い中、おばさんも大変だろうな、、、、、と思う。
お財布に二百円しか入ってない時もある
ヤクルトほんとは好きじゃない。
それでも最低『2本くださーい』と、言ってしまう。
1本って言えないのも、見栄っ張りな性格の悪いクセだ。
財布の中が更に貧しくなる。
それでも、おばさんがやって来るたび、内心トホホ、、、と思いながらも買っている。
『金は天下の回りもの』って言うではないか!と。
自分を励ます。
もしかしたら、お金、、、、回ってキテルのかなあー?
神様、1度でいいから実感させてくれーーー! By ビフィズス菌まつかわ

涙のノンフィクション『嫌われ松子の一生』

時間がない時間がないと言う事が口癖の私には、『美容室に行きたいなー』と思っても、行く時間がない。
行きたいと思ってから、大体は2ヶ月くらいは経過する。
そして、どうしようもなくなった頭をぶら下げて、急いで行く。(結局、行けるんじゃないか。) いつ日だったか、そこの女性っぽい美容師が、映画『嫌われ松子の一生』を観て、私に「絶対、観た方が良いですよ」と勧めてきた。
どんな話かと聞くと、主演中谷美紀が演ずる松子は、最初は学校の教師だったのにもかかわらず、教師を辞めてから、次から次と悪い男にだまされていって、暴力を振られても男に貢ぎ、終いにはソープ嬢にまでなり、どんどんどんどん悲惨な生活に落ちまくっていき、ラストシーンは可哀想で可哀想で観てられなかった。
と切々と語っている。
「とにかく男運が悪く、あんな浮かばれないヒドイ話はない。
でも面白いから、絶対観た方がいい」と言っているのだ。
そんな悲惨な映画、観てどうするのだろう。
私は観に行かなかった。
しばらく経って、うちの暴力上司が出張先からこんな内容のメールが送られてきた。
「松川、嫌われ松子の一生っていう映画、絶対観た方がいいぞ。
お前と似てるから、絶対、観てみろ。」 当然ながら、私は、固まった。男運が悪い。あんな浮かばれないヒドイ話はない。
そう聞いているのに、私と似てる?どっちの男の言っているのが正しいのか。
2人の男の映画の観方が、ここまでズレている映画の実態とは。
それにしても、うちの暴力上司は出張先で相変わらず何をやってんだ!と、思いながら、とうとう私は、重い腰を上げて、嫌われ松子のDVDを借りてきた。中谷美紀は綺麗だったあー。
しかし、そこを似てると言ってくれてるのではない。(はい、残念!)
一言で言ってしまうと、松子は、頭が悪い。判断力が弱い。
そこを誤ってしまうがために、どんどん不幸になっていく女の典型なのだ。
『社長さんよ?、どこが似てんすかねー(ぶつぶつ)』
「バカだなー。松子は結局、みんなから、松子、松子って愛されていただろう。
みんなの心の中には、結局、松子が残っているんだ。
松子はすごい幸せな女だっただろう?」(ほほう、そこが似てんのかー?誉めてんのかー? いやいや、いくら飛躍して考えても、幸せには見えないぜっ!!この男、自分が暴力上司だから、この映画をいい事に自分を正当化させようとしてるんじゃあるまいな。) 『でも、あんな死に方はないでしょう!』
「バカだなー。松子はあそこで死ぬから、いいんだろう。」
晩年、松子は浮浪者になってしまった。
その姿を昔の友人が見つけ、松子に名刺を渡すのである。
でも、ひねくれてしまった松子は、その名刺を川に向かって捨ててしまったのだ。
しかし、松子は希望をもち直し、自分が捨ててしまった一枚の名刺を拾いに河川敷に必死に探しに行って、捨てた名刺を見つけ出すのだった。
名刺を手にして、希望をつかんだ松子だったが、河川敷で、野球をして遊んでいる少年達に頭をバッドで殴られ、その場で呆気無く死んでしまうのである。
「嫌われ松子」と私の共通点。。。。その答えは私の中で、未だ出ていない。
松子は、本当は寂しかったのだ。だから、こんな顔をして、おどけて生きてきたのである。
寂しい女。おどけて生きる女。そこに共通点があるのかもしれない。
そして、松子は一生懸命に生きた女であった事も間違いない。
私も毎日が一生懸命だ。似ている!確かに似ている!
松川日向子、略して松子。これまたちょうどいい!
だが、この秋、一生懸命生きている松子の元に、夫からの三行半が届いた。
そう、松子は、リコンという十字架も背負って、一生懸命にホノルルを走ったのだ。
30代を振り返っての懺悔と、40代突入への希望を胸に。
走り切ったあと、バッドで殴られなくて良かった。(ほっ。。。)

トイレ紙 #02

恋愛を沢山しなさい
そうすれば 人生、
理屈じゃない事が分かるはず
子育てをしてみなさい
そうすれば 人生、
筋書き通りじゃない事が分かるはず

F1ドライバー松子

私の人生は、気苦労の固まりである。
姓名鑑定士の肩書きも持っている私は、本当に名前の通りだなと思っている。
本名、松川ゆかりから出てくる気苦労は、自分でもなかなか耐え忍びない。
なので、結婚当初から、松川日向子という名前にして生きているのだが、本名から出てくる運命のいたずらは、すごい。
26才で長女を出産し、必要に迫られて、仕方なく免許をとったものの、ぶつけた回数は数え切れない。
実は、昨年は海外に3回脱出した。
一つは、余裕もないのに無理くり行った社員旅行の台湾。もう一つは、天国と地獄が一緒になってるような中国広州の出張。
理由がどうであれ、中身がどうであれ、十分贅沢な事である。
その恩賞を受けるかのように、車の事故も危うく、3回になるところだった。
ホノルルに行く前日、新聞沙汰の玉突き事故の超本人になるところだったのである。
この12月の札幌は、ゆっくり走っていても滑る時期で、この日、バイパスの中を潜る途中で、あららあららと、滑り始めた。
左斜線から右斜線に、車が滑っていく。これはまずい、これはまずい、と思いながら、いくらブレーキ踏んでも効かない。
もうダメだー!ぐっちゃり行くぞー!と思った瞬間、なんとか壁ギリギリのところで止まった。
と、安心するや否や、後ろに白いバンが、私の急ブレーキのせいで、横になり縦になり、迫ってきている!!
私は、すぐに車を発進させた。「神様、お願いっ!あの車がぶつかりませんように!!」
前方で車を止めて、背後を振り返った。
白いバンは、右の壁に前方を直角にして、何とか止まった。
ギリギリのところで、ぶつからないで済んだのだ。
ところが、白いバンは動かず、じっと止まったままだ。
もしかして、心臓発作でも起こしてしまったのではないだろうか。
こっちの心臓も、ばっくんばっくんである。
心臓発作を起こされても困るが、これから私は、間違いなく怒鳴られる!
間違いなく。。。。
心の中の半分は、『助かったのだし、そのまま逃げたいよ?』と思ったが、私はその場所でじっと待った。
やがて、白いバンは、ゆっくり私の止まっている車の後ろに着いた。
怒鳴られる。間違いなく。間違いない。。。
そして、私は、覚悟を決めた。
よーし!と思い、大きな声で「ありがとうございます!」と言って、車を飛び降りた。
そして、両手を合わせて拝むようにして運転手の所に走った。
『ごめんなさーい!お怪我なかったですか?』無心で言った。
期待を裏切らない強面の50才くらいの人だった。
しかし、そんな事よりも私は、大事故にならなかった安堵と、恐怖で震えていた。
すると「あんたこそ、大丈夫かい?」と、言われたのである。
へっ?犯罪者の私に、この人は、大丈夫かい?と言っている。
夢ではない。
「あんたが、すぐに逃げてくれたから、ぶつからずに済んだ。俺は、もう完全にいっちゃうなーって思ってたけど、いやー、ありがとう!!」
うそ?!お礼を言っている。
「よく、逃げてくれたねー」
えっ?今度は、褒められているぞーー。
「気をつけて行きな」
「はいっ、ありがとうございます!」
と、両手を合掌したまま別れた。
車に戻り、まだ震えが止まらなかったが、とにかく大事故にならなかった事に感謝した。
事故っていたら、怪我がなかったとしても、ホノルルに行けなかったかもしれない。
事故の処理を保険屋さんにお願いしたとしても、その罪悪感を背負って走るのは、あまりにも重過ぎである。(リコンという十字架だけでも思いのに。笑)
しかし、過去の人生を振り返っても、そんな気苦労を背負わされる事は、しょっちゅうである。(ついてない人生)×(気苦労)の2乗=私
全然あり得ておかしくはないのである。
だから「神様、今回はありがとう。でも、どうしたんですか?」って感じだった。
だが、人間褒められると、いい気分になるものだ。
あの状況で、車をすぐに発進した私は、すごいでしょ?(エヘン)
しかも私は、女だぞ?(エヘン)
普通は、自分の車が止まった時点で、ほっとして固まってしまうものだ(エヘン)。
あの時、助手席で同じく恐い思いをしながらも一部始終を見ていた次郎子には、うんと頷くまで、何度も何度も尋ねた。
「ママって、F1ドライバーの才能あるよね?」

トイレ紙 #03

ツキを呼び込む『魔法の言葉』

これは、イスラエルのお婆さんが話してくれた本当のお話だそうです。
ある男が、学生の時に、イスラエルを旅した時の事です。すべてのホテルが閉まっていて、どこにも宿泊が出来ず、男は寒さに震えながら街の中を何時間もひたすら歩いて探していました。
すると、ある一人のお婆さんがニコニコとしながら、この男に近付いて来ました。そして、『良かったら、うちに泊りなさい』と、言ってくれたのです!
この安全な日本でさえ、見知らぬ人を泊めたりしない時代に、おばあさんは、いとも簡単に困っている男に声をかけてくれたのです。男は、それでは、あまりにも甘え過ぎだと思ったので、『何とかもう少しホテルを探してみます』と言って、お婆さんの住所だけ聞いておいて、その後も探し続けてみましたが、結局このお婆さんの家にお世話になる事になりました。なんと、お婆さんは、この男が必ずや自分の家に来る事が判っているかのように、寒い中玄関で待っていたのです。
古い家の中に入ると、暖炉の前のテーブルに2皿の温かいスープが用意されており、深夜遅くまでお婆さんは、英語でいろんな話をしてくれました。
知らない男を泊めるわけですから、普通は、この男の事を色々と聞いてもおかしくないのに、お婆さんは、自分の話ばかりを沢山してくれたのです。
そして、『実はね、ツキを呼び込む魔法の言葉があるのよ。これさえ唱えていれば、誰でもツキっ放しになるのよ。』と、言い出したのです。
『どんな言葉なのですか?難しいのですか?』
「すごーく簡単で、誰でもよく使う言葉でね、一つは、ありがとう!で、もう一つは、感謝します!なのよ。ねっ、簡単でしょう?」
『とっても普通なんですね。でも、どういう時に使い分けしたらいいのですか?』
「そうね、ありがとうは、困った時に使うといいわね。寝坊しちゃった時とか、事故っちゃった時とか、そして、親が亡くなった時も、歯を食いしばって、ありがとう!と言うのよ。嫌な事が起きた時って、嫌な事を考えてしまうでしょ?そうするとね、また嫌な事が起きるの。不幸は重なるって言うでしょ?
それは間違い無くこの世の法則なのよ。だけど、ありがとう!と、言うとね、そこで不幸の鎖が断ち切れちゃうのよ。どんな不幸と思われる現象も、幸せと感じる状況に変えてくれるのよ。」
なんとも不思議な話ですが、男は日本に帰ってから、車での大きな事故を2回起こしまいました。
一つは相手からの正面衝突!車は大破。
もう一つは、お年寄りを車ではね飛ばしてしまったのです。ところが、正面衝突の事故も、誰もが無傷。
そして、飛ばされたお年寄りも自分でひょろひょろっと起き上がって、救急車にスタスタと自分で乗り、病院で調べてもどこもケガしてなかったのです。
その後、このお年寄りの家は、お茶を作る農家だったために、時期になるとアルバイトに呼ばれ、2時間働いただけで、1万円のアルバイト料をくれたそうです。
みなさん、お分かりですね?この男は、この2つの事故が起きた瞬間も大きな声で『ありがとう!!』と、叫んだのです。
さて、ここで不思議発見!
ありがとうという字は、漢字で有難うと、書きまよすね?
困難が有った時に、ありがとう!。。。
で、有難う!なんでしょうかね?
このイスラエルのおばあちゃん、日本語なんて全く知らないはずなのに、偶然の一致にしては、すごいと思いませんか?
みんなも早速、実践してみて下さい。
私は、さっそく使って、ラッキーな事がありました(パチパチ)。
さて、もう一つの『感謝します!』の使い方を知りたい人は、まつかわさんまで聞きに来て下さい♪
では、みんな笑顔で今年も宜しくお願いします!

F1ドライバー松子

それにしても、ありがとうのパワーは、すごいのである。
実は、この年の第1回目の時は、夜、会社の駐車場でバックする時に起こしてしまった。
車をバックしたら、なんとなく下がりが悪い。
この時点で接触してしまっているのである。
2回目にアクセルを踏んだら、ビーーっと鳴らされ、接触している事に気づいた。
しかも、事故の寸前まで、事務所で悩みを聞いていた子どもタレントのお父さんを迎えに来た奥さんの車に、そおっとそおっとバックしてぶつけてしまうのだから、自分の運命を恨みたい。(ついてない人生)×(おっちょこちょい)=私
仕方が無いのである。
さらに考えてみると、車を乗る前に、これからぶつけますよ?!と言わんばかりに、この車に会釈しているのだから、これまたすごい。
押した位の感覚でいたが、翌日、車の内部に予想以上の破損を与えてしまっていたらしい。
そう、ぶつけてしまった時、現状をすぐに受け入れられず、「ありがとうございます!」と言うのを、見事に忘れてしまっていたのである。
トイレに自分で掲げておきながら何とも情けない。
お金がかかって大変だな、と言わんばかりに、社長が『よし、俺がお前の車を塗装してやる。』と、しゃしゃり出てきた。
なにやら、家に帰ると、研磨する機械まで持っているらしく、『任せておけ』と、豪語された。
『小さな傷も、この際全部きれいにしてやる』と言った。
事務所の駐車場は、ちょっとした修理工場と化した。
向かいには、うちより芸能人が出入りしているお店がある。
このマスターの料理は、野球界、ゴルフ界、芸能界に及んで有名であるが、おやじギャグと、身の置き場がなくなるお世辞は、かなりきついものがある。
この日も、「おう、やってるねー!社長は、さすが何でも出来るねー。
いやー大したもんだ。
爪の垢でも煎じて飲ましてもらいたいねー。」と、持ち上げるだけ持ち上げて去っていったらしい。
ところが、出来上がった赤い車は、乾いても、研磨をかけても、前も後ろも見事なパッチワーク状態になってしまった。
翌日、私はその車で仕方なく次郎子の参観日に行き、両サイドご立派な車の間に駐車して、参観日が終わる寸前に教室を出て、子供を待たず学校を去った思い出がある。
その翌日、私はきちんとした修理工場にお願いして、全塗装をかけた。
この時も、社長は口を出してきた。
「黄色がいいんじゃないか」と。
そして、私の車は赤から黄色に塗り替わった。
だが、また騙された。
黄色いタクシーをみて、まずいと思った。
まるっきりタクシーと同じだ。とほほ(ついてない人生)×(だまされる)=私

Uターンの車には気をつけろ

2回目の事故の時も、時間に追われ起きてしまった。
人生一度も、ぶつけた事はあっても、ぶつけられた事はない。
世のため、人のために、せっせと時間に追われ、走っては、いろんな事が起きる。
この日は、マンションに子供を送って、また会社に戻ろうとマンションを出て、右に曲がった直後に起きた。
20時半くらいだったと思う。
こんなに働いても働いても、右から左とお金が出て行く。
しかし、これも名前のせいだから仕方ない。
人をひいてないだけ、感謝である。
気が付いた時には、前方になぜか横向きになった車が止まっていた。
なんでえ?!!ここに居るわけ?!!?これは間に合わんぞー!」と思うや否や、目を見開いたまま、そのままドンと、ぶつかってしまった。
私は、悔しくも社長からランドローバーを借りており、相手は、軽自動車だった。
車の中には、3人の女性と、赤ちゃんが乗っていた。
「キャー」という叫び声と同時に、目の前でドラマのように、窓ガラスがしゃらしゃらと割れていき、お母さんの手の中で、当然のように赤ちゃんが泣き出した。
「よしよし、大丈夫だ、赤ちゃん。どこも打ってないよ。」
意外にも、その時の私は冷静で、衝突のショックで車が揺れたものの、誰も頭などをぶったりしていないかどうかを、スローモーションのように確認していた。
この前の教訓を思い出し、今度こそは!と「ありがとうございます」と、小さな声で言ってから,私は相手の車に駆け寄った。
小さな声というのが、ちょっと惜しいのだが、なんせ相手は窓が無くなっているのだから、聞こえてしまっては厄介なのだ。
私は「近くに交番があるので、今、呼んできますから、ここで待っていて下さい」と、ランドローバーで交番まで走って行ったが、役立たずな事に無人だった。
ランドローバーも、足回りがどこか曲がってしまったのか、さすがにギコギコ鳴っていた。
すぐに、交番の受話器に書かれていた東警察署に電話したが、気が付くと、車に乗っていた赤ちゃんのおばあちゃんと思われる女性が、「ハーハー」と言って、私を追いかけて来てくれていた。
責任感の強い御方だと思った。
「あらー、寒いのに、走ってこられたのですか?」
と、私は気の毒そうに話しかけたりしていた。
ところが、私が逃げると思って、このおばあちゃんが、一家を代表して必死に追いかけてきた事に、私は後になって気付いた。
そんなに人相悪いかな、私って。
夜の黒いサングラスは、もうやめようと思った。(ついてない人生)×(誤解されやすい)=私
東警察署が来る間、あまりにも寒いので、ランドローバーに被害者の方々を押し込んで、私は世間話を始めた。
大体において、この時点で、どうしてこの軽自動車が停車していたのか分かっていない私は、100パーセント自分が犯罪者だとは思っていない。
「お母さん、お若いですね。」
「赤ちゃんは、6ヶ月位ですか?」
「うちの母が、車には必ず、ジャンパーとか、毛布1枚入れておきなさいよ!って、いつも言われているのに、言うこと聞いてないで、失敗しました。」とか。
反応はあまりよくなかった記憶があるが、悪人でない事だけは伝わったようだった。
随分長く待って、警察が来た。
何でもないのに、すぐに救急車が呼ばれ、私はみるみるうちに犯罪者扱いとなっていった。
Uターンするために、止まっていたらしい。
警察に一生懸命、自分達が悪くない事を、説明しているようだ。
そこに私は、ぶつかっていったのである。
もう少しだけ、大きな声で言えば良かったな。
『ありがとうございます』って。

近所付き合いには気をつけろ

私は、マンション住まいをしている。37歳を迎える正月に、過去の車にまつわる事件の中で、一番しんどい事故が起きた。
36歳は、自分の占いのうえでも、波瀾万丈の年ある。そのフィナーレを飾るように事件は起きた。
私は、その前の年に『今年こそは、スキーをやるぞ!』と、スキーウェアを大学以来はじめて購入していた。
しかし、貧乏暇なしで、着る事もなく1年が経過した。そして、この年、横顔イケメン君に誘われ、スキーに出かける決心をしたのである。
1月3日だったと記憶している。立体駐車場というのは、便利なようで不便である。
暗証番号を押して、車が下がってくるのを待ち、車の乗車して、立体駐車場から出したら、また暗証番号を押して、立体駐車場のシャッターを閉めなきゃならないのである。
入庫する時も一緒である。
厄介なのが、そこに制限時間があり、1分近くなると、パオーンパオーン♪と鳴りだす。
さらに制限時間が経過すると、機械は止まり、システムメンテナンスという会社に電話をしなければならなくなる。
そして、システムメンテナンスと車に書かれた紺色の車が登場するまで、その場で待たなきゃならない事になる。
だから、荷物がたくさんある時は、『システムメンテナンス、システムメンテナンス』という文字が頭に浮かび上がり、必然とバタバタしている自分がいるわけなのである。この日、やっとスキーだ!と、思いながら待ち合わせ現場に向かおうと、車を出そうとした。
気分は、『やっと!やっと!スキーだぞ?。』って感じだった。ところが、バッテリーが上がってしまっていたのである。ちょうど、その現場を、家族で出かけようと、先に車を出していたマンションの住人のYさんが見ていた。
親切に「ジャンクしましょうか?」と、言ってくれた。
『今、無理しなくても、マンションまで横顔イケメン君に迎えに来てもらえばいいのだ。』と、思ったのだが、私はこう考えてしまったのだ。
『ここで、大丈夫です。』と、言ってしまっては、可愛気がない。
『普段、近所付き合いがないからこそ、こういう時に、甘えてみるのが、交流のきっかけとなるのだ。』
真剣にそう思ったのだ。得意の18番笑顔でこう言ったのが、不幸の始まりだった。
「お出かけのところ、すみません。お願いします。」
そして、Yさんは自分の車から、コードを取り出し始めた。
それが、Yさんのゆったりとした人柄と同じペースで、ゆったりしているのである。
もちろん、私の車は、立体駐車場の中である。
頼んだのは失敗だったかもしれない。
と、すぐに思ってしまった。
決して、有り難くなかった。
私の耳には、パオーンパオーンという音がもう、脳裏にはシステムメンテナンスというカタカナが散らつきはじめた。
次に、コードをつなげたのだが、『あれ?あれ?』と、言い出した。
同じ住人なのに、Yさんは、パオーンパオーンは全く気にしていない様子だった。
さすがに、これは任せておいたら、まずいぞ!と思った私は、
「ごめんなさい。
一回車を戻しますね」と、言った。
一度、車を戻し、もう一度下ろして、リセットすればいいのである。
自分の運転席の扉を閉め、暗証番号を押して、シャッターが閉まっていった。
立体駐車場の中の車は、車体を半回転させ、勢いよく上がっていくのである。
勢いよく、、、、、、、、、、、、勢いよく、、、、、、、、、、、。そして、
ガタガタドッタンドドドドドドドドドドーン
私は、人生初めて体験するような音を味わった。
それは、地球が終わるような音だった。そして、機械は壊れてしまった。
何かが中で起きた事は間違いない。
しかし、Yさんは家族でお出かけのところ、気を遣って声をかけてくれたのである。
ここは、こう言うしかない。「大丈夫ですから、どうぞお出かけください。」 Yさんは、申し訳なさそうに出かけていった。
システムメンテナンスを呼ぶ事、数十分。
とてもとても寒かった。そして、とてもとても心細かった。
やがて、お世話になりたくないシステムメンテナンスがやってきて、
立体駐車場の中を開けてみた。
あーあーあー。
私の車の運転席の扉は、半ドアだったのだろう。
そして反転する時に、見事にその反動で全開になり、上に上がって行く時に、その開いた扉で、そこまでの車を全て傷つけていったのである。
ショックだった。
もう終わったと思った。
しかし、不幸中の幸いなのかどうかの判断は難しいところだが、私の車は、5階に納車されたため、傷つけた車は3台だった。
管理人さんも、あーあーあー。
システムメンテナンスさんも、あーあーあー。
その声で、私もどんどん落ち込む。
そして、なんと、タイミングがいいというか悪いというか、その傷つけられた車の人が、外出しようと駐車場にやってきた。
確かに、事情は説明しやすいが、立体駐車場にしまわれている自分の車を出そうと思ったら、事故に遭っているのだから、お気の毒もいいところだ。
そして、まさかと思ったが、次に駐車場に来た方も、その3台の中の一人だった。心の整理もつかぬまま、謝罪連発する事になる。
保険屋さんも、正月で連絡とれずで、まったくもって頼りない。
その後の処理については、未だ傷が癒えていない。
ただ、傷つけた順番からいうと一番被害の少なかった3台目の外車の持ち主で、一番、紳士な対応で、心配する事ないよと言ってくれた方からは、予想外も予想外の請求額がきて、しかも、改めて謝罪しに行ったときは、ご主人が留守で、インターフォンから、その奥さんにこう怒鳴られた。
「主人とは、まったく関係ありませんからっ!!」
今、考えると、私に対する不満だったのか、なんだかよく分からないが、玄関先に私の好きな近藤商店の海産物を玄関先に置いてきた記憶は残っている。
数ヶ月経って、エレベーターで、Yさんに会った。
「あの時、あれからどうなりました?」
聞いてくれてありがとう。でも、話したところで、どうしようもないと思った私は、1億円の借金を返し終えたような誇らしげな笑顔で
「ご心配かけました。大丈夫です。」とだけ、答えた。
「そう、大丈夫という言葉ほど、私にとって、はかなく意味のない言葉はない。
大丈夫と言いながら、何度、1人で戦ってきた事か。」
父子家庭でがんばってます君から、今月末で会社が閉鎖して、仕事を失うかもしれないというメールが入った。
大丈夫ですか?というメールに、大丈夫です!という先の見えない返事。
そこで、彼に打った励ましメールが、トイレにも貼られる事になった。

トイレ紙 #04

『大丈夫の嘘』

「大丈夫?」
って聞かれて
「大丈夫。」
ってメール返す時って、
ほんとは全然大丈夫じゃない。
どうしようもないから
「大丈夫。。。」って打ってしまうのかな。
おまけに、「大丈夫。大丈夫。。。」って
2回も打ってしまったりする。
そして、布団の中でずっと泣いたりしちゃうんだ。
だから、おいらの「大丈夫」は、
ほんとは全然大丈夫じゃない。
大丈夫。。。
って、たぶん自分に言ってるんだろうな。
『大丈夫!大丈夫!人生そんなに捨てたもんじゃない』
『大丈夫!大丈夫!これ乗り切ったら、きっといい事あるさ』って。
そして、人は丈夫になっていくのかな。ワン!

遺伝

私が子供の頃、出かけたはずの母が必ず戻ってくる。
「メガネ、メガネ。
メガネ知らない?メガネ、出てこーい!」と、言っている。
そんな大人にはなりたくないと思っていた。
ところが、うちの会社にも、「行って来まーす」と、会社を出ては  必ず戻ってくる奴がいる。
私だ。
だから、最近は、もそっと出ていく癖がついた。
  鍵にも、めがねにも、物にはすべて、電話番号があったらいいのにとなと思った。
だけど私はすごい。
自分の携帯探すのに、電話番号をかけたのだが、右耳に当てていたのは、自分の携帯だった事が過去2回ある。
この間、実家に帰省した際、茶碗を拭きながら、母が私にこう言った。
「メガネとかさ、鍵とかさ、時計とかさ、呼べば音が鳴るようになっていれば、便利なのにね?」
がっかりして、頷けなかった。
忘れやすいというのも、どうやら遺伝らしい。
時計?
時計で思い出したが、15年近く、私の腕には時計はない。
すべて、何らかの理由で無くしてしまった。
新婚旅行の時も、成田のホテルで時計を忘れ、飛びたった。
それから、一つも買っていない。
現在は、携帯があるので、殊更不自由はない。
男からプレゼントされた電池がなくなった時計が1つ、鏡台の中に眠っているだけだ。
しかも、それから20年経っている。
あ?、私もそれから20年経っている。
私は、目が悪い。
0.08以下くらいの視力だ。
ただし、私が、メガネを必要とする時は、運転する時と、知人の結婚式で奥さんの顔を拝見する時くらいだ。
だから、普段は、ぼうーっとしながら、生活している。
メガネ売り場の人が裸眼で生活している事に感心し、
『視力と見る力は違うからね』と、言ってくれた事があった。
なんだか誉められたような鼻高々な気分になった記憶がある。
でも、視力が0.08でも、見る力が1.5あったら、その人の視力って、どっちになるんだろう?(うふっ)
そんな私でも、最低昼用のメガネと、車用のサングラスは、無ければ困る。
困るのに、どうした事か、次々となくなる。
盗まれのは、悔しいが理由は分かるのでまだマシだ。
私の場合は、ほとんどが、勝手に無くなっていくのだ。
ここで間違わないでほしいのは、だらしないというのとは、どこか違う。
昨年末、函館の巨大ツリーのイルミネーションを観ようと張り切って使い捨てのコンタクトを入れた。
ところが、気がついた時にはイルミネーションが惚けていた。
まったく分からないまま、コンタクトが消えていたのである。
コンタクトが落ちる事はよくある。
しかし、両眼から一気に消えるというのは、なかなか体験できる事ではない。
手品みたいだ。(感心している場合ではない)
実は、結婚指輪もいつの日か無くしてしまった。
普通、女が無くすか?と、自分をこっそり叱っている。
探しても、時が経過しても、どっこにもないのである。
不思議で仕方ない。
ホノルルマラソンの完走メダルも、帰ってきて机に置いたのに消えてしまった。
そのまま迷宮入りだ。「たぶん、私の身体には、そういう不思議な事が起こる電磁波が流れているのではないか?」
こういうのは、どこで調べてもらえるのだろう。
催眠術?霊媒師?
いやいや、結構、プリンセス天功に近い女だったりしてな。あっはっは(メダルは、おそらくもって、ご○箱に入れてしまったに違いない。)

インターネットカフェ自由空間

札幌に自由空間というインターネットカフェがある。
私は、2006年の11月に初めてそこに、1人で行ってみた。
そこで、私は、思わぬ恐怖に襲われる事になったのだ。
間違っているかもしれないが、なんとなくオタク気分を味わおうという狙いもあるような、ないような。
隣の“ユナイテッドシネマ”で20時45分から上映されるまで、1時間も時間をもてあましていたのもあるし、そこは業務提携しているのか、映画の半券を見せると、自由空間の使用料が半額になるのである。
なかなか出来たシステムだと思いながら、私は、まず受付で『カラオケはありますか?』と、聞いた。
無惨にもカラオケは無いと言われ、私はすぐに諦め、『まったく初めてなので、ゼロから教えて下さい』と、丁重にお願いした。
しかし、『そちらの機械でまず登録をお願いします』と、機械の方向を指差され、私にとっては全く不親切な対応だった。
早速、機械の前に立ったものの、これじゃまるで、銀行のディスペンサーを前でおろおろしている老人のようだ。。。
と自分を客観的に見ながら、なんとか登録完了した。
部屋番号を言われ、フリードリンクの飲み物を手にして、何が何だか分からず、クネクネ回っているうちに、DVDが置かさっているコーナーを通りかかった。
そこで私が、これでいいこれでいいと目に入ったものをそのまま手にとったDVDは、『私の頭の中の消しゴム』だった。
ほんとは観たいと思ってたのよ?これ、と思う反面、韓国の恋愛映画をわざわざ映画館で観るまでもないとも思っていた。
何とか、自分の部屋を見つけて、DVDを観ようと思ったものの、今度はプレステなどのゲームさえやった事のない私には、ゲーム機器の操作ひとつ大変な苦労で、自由に遊ぶどころか、最初の30分くらいは、不自由で不自由で、『何が自由空間だ!』と、つぶやいていた。
やっとの思いで始まった『私の頭の中の消しゴム』。。。
27才の女性が、どんどん記憶がなくなっていく話。
ところが、初期症状がまったく自分と似通っていて、『やばいわ私』と、冗談でなく青ざめてきてしまい、マッサージチェアにもろくに座っていられず、映画の中で繰り広げられている恋愛場面にも環状移入できず、すっかりソワソワちゃんになってしまった。
映画の中で、医師が『最近、重いストレスはなかったですか?』と、聞く場面があった。
ぎょっ、最近、ストレスからめまいもするようになった私。
主人公の女性も、しっかりめまいしているではないですか。
しかも、しかも、健忘症には、遺伝が含まれていると言っていて、主人公の親も、かなり忘れっぽいらしい。
DVDを観ながら、あんなに落ち着かなかった事はなかった。
ところが、いいところで、時間が来てしまい、そのままユナイテッドシネマに移動し、本来の目的の映画館で映画を観た。
ところが、あの日、なんの映画を観たかの記憶はない。
ただ、数日後、どうしても気になって、『私の。。。』の後半部分を貸しビデオさんから借りてきて、大量の涙を流した。そして、自分にかなりの精神的ダメージが残った事は言うまでもない。
やめときゃいいのに、渡辺謙と、樋口可南子演ずる『明日の記憶』も借りてきて観てしまった。
若年アルツハイマーの人の脳には、異常なタンパク質が増えているらしい。
きっと私の頭の中も、タンパク質で覆われているのだろう。
19歳の時、実家に帰省していた私は、横断報道を渡っている時に、目のくりっとした可愛い女の子に声をかけられた。
『ゆかり?、元気い?』
きょとんとしながら、自分の記憶をたどってモタモタしていると、その子は、『ごめんね、いいの、大丈夫』と、言って立ち去って行ってしまった。たぶん、1年前に卒業した同じ高校の子なのではないかと思う。
そんな話が、ごろごろあって、この前も、学校の父兄に大ミスをしてしまった。
『いやー元気だったあ?松川さん!』
相手は、慢心の笑みで話しかけてきたではないか。
『森 あきら君のお母さんですよね?』
彼女は、森 あきら君とは、全然関係のない野島さんだった。
しかも、森 あきら君というお母さんの顔さえ、よくわかっていないのに、頑張ろうした結果が、最悪となった。
『大丈夫、大丈夫。
私もそんな事、よくあるから。』
野島さんはそう言いながら、肩を叩いて励ましてくれたのである。
そう、大丈夫という言葉ほど、私にとって、はかなく意味のない言葉はない。
野島さんを大いに傷つけたあと、やっと野島さんとはどういう縁だったのかを思い出した私は、なんと『思い出しましたファックス』を送ったのである。
これもどうかと思うが、馬鹿だと思われても、私の精一杯の気持ちである。
野島さんは、とても優しく私を包みこんでくれた。
世間の皆様、お許しください。
いずれにしても、私は病気なのです。
しかも、遺伝性の病気なのです。(ついてない人生)×(記憶喪失)=私
まったく私にとっては不自由な思いをした自由空間との出会い。
登録カードをよく見直すと、『自遊空間』の間違いだった。おほほ

映画『明日の記憶』主演 私

真冬の北海道。
平田さんという人から、私にこんなメールが入ってきた。
  松川日向子さま
  あけましておめでとうございます。
  昨年は松川さんと再会できて嬉しかったです。
  最近の平田は
   年末年始で映画用の脚本を書き、昨日脱稿しました。
  監督は某有名監督さんです。
  脱稿してようやく新年気分になれました。
 「某人気恋愛小説」は映画企画として仕切直し、
  げんざい脚本の直しをしております。
  資金集めや配給交渉を少しずつ進めているところです。
  ……松川さんにお願いがありまして、
  もしお時間がありましたら、
  「某人気恋愛小説」を読んで
  感想や意見を聞かせてもらえませんか?
  脚本直しの参考にしたいので。
  こんどなんかゴチしますんで(笑)
  今年も企画制作、脚本とがんばりますので
  よろしくご指導をお願いいたします。
この男、私は、2回しか会った事がない。しかも、私には1回目に会った記憶が皆無なので、私からしてみれば、昨年の夏初めて会った人という感覚。なんかゴチしますんでー?なれなれしいというか、なんというか。
昨年は、東京から映画の話で、ロケ現場との交渉等に来ていた。
映画関係で来る助監督とかって、必ず紙袋か、紙袋の形で丈夫な手提げ袋に沢山書類入れて、背中にリュックサック背負ってやってくる。
話は、20分程度で終わった。映画が本決まりになったところで、また、この男から連絡が入り、そこから動けばいいのだ。
普通は、このままお帰りになっていいのだが、性分というか何と言うか、東京からリュックサックを背負い、紙袋を下げてやってきた男には、どうもその後、予定が無さそうに見えたのもあるし、そのまま帰しても、なんとなくすっきりしない感じもした。
『ご飯、食べてませんよね?』「はい、食べてません。」
私は、さて、近くの居酒屋『おりん』に、この男を連れて行った。
30分くらい、世間話をした頃だろうか。
その間も、この男の口調が、どこかなれなれしいのが、耳についていた。
「松川さん、実は、松川さんと会うのは、僕、2回目なんです。」(えーーー!!まずい、またこの手の記憶喪失。)
「5年前に、映画のロケでお邪魔して、その時、タレントさんも出して頂いて、お世話になってるんですよ。」と、言い出した。
私の脳は、一瞬にして固まった。
以前、<僕の頭の中には、私の頭の中の消しゴムどころか、カビキラーが住んでいます>と、励ましてくれた専門学校の学長がいた。
うまい事いうものだと感心したが、この学長は、数年前に脳の大手術をして、過酷なリハビリを経て、社会復帰している。
したがって、カビキラー説は、シャレなのか現実なのか分からない。
しかし、まさに私の頭の中は、消しゴムどころか、カビキラーになってしまっている。
推定体重120キロはありそうな、目の前に座っているこの特徴ある男を、私はどう記憶をよみがえらせても、微塵も思い出せなかったのである。
私は、潔く『思い出せません』と、頭を下げた。
そうすると、彼は手帳から、「あの時、請求書と一緒に送られてきた松川さんの名刺をずっと大切に持っていました。」と、言いながら、太い指で、手帳の間に保管されている名刺を出し始めた。(まずい、まったく分からない。できれば、出てくる名刺が自分のものでない事を祈りたい。)
「松川さんが、あの時に、名刺にひと言添えてくれまして。
なかなか、そういう人はいないもんですよ?。」(これまた、言い方がなれなれしい。いや、それよりも私の字でない事を祈りたい)
『この度は前田が大変お世話になりました。請求書を送らせて頂きます。
また是非、札幌にいらしてくださいね。』
ぶひっ。
期待を大いに破り、そこに書かれている字体は、確かに私の字体であり、まさに私が書きそうな文面だった。
実は、今年の正月、会社にこんな電話が入った。
松川さん、美好さんからお電話入ってまーす。(美好、美好、美好?あの時の映画に出てもらった前田さんのお友達か何かだったような。。。。美好、美好、美好。。。。???)
『はい、お電話かわりました。
松川です。』
「もしもし、覚えてますか?美好ですうー。」と、少し甲高い声が受話器から流れてくる。
『美好さんって、あの前田さんの。。。』
「そうです。」(ほっ、良かった!やっぱり前田さん関係だったか。私に記憶も捨てたもんじゃない。)
そこから私は、必死に自分の中にある前田さんの昔話を思い出し、相手から質問されないように喋り続けた。
『一度、前田さんがギャラを会社にとりに来たとき、すごく疲れた顔をしてたので、大変なんだなーって、思った事あったんです。』
「あったねあったね、そんな事」私は得意になって話を続けた。
その後、年下の男性と再婚した話。すごく幸せらしくて、赤ちゃんが産まれた話。
けっこう盛り上がり30分くらいは話しただろうか。
美好さんは、専業主婦で、子育てをしながらいいお母さんをしているらしいが、私の口からは、ずっと前田さんの話しか出てこない。
出したくても、美好さんの記憶は、私には皆無なのである。
さすがに段々困ってきた。前田さんだけの話をするのも、そろそろ限界に達していると思った私は、
『ところで美好さんは、前田さんとナニつながりで、ずっと長い間、お友達なんですか?』
「あの、私が美好です。結婚して、美好になったんです!」
いっやーーーーーーーーーん。

改名 120男

120男は、豪快に沢山食べた。
お刺身の盛り合わせも、ほとんど彼の胃の中に、すっすと入って行った。
しかしながら、以前に会っていたとは。
しかも、見た目によらず繊細な事に、お守りのように名刺を持っていてくれたとは。
そのまま帰さず『おりん』に連れて行って良かった。
と、胸をなでおろした。
どんな場合も人を大切にしておけば、なんとかクリアできるものだ。
そう思いながら、ホテルに帰る120男のタクシーを見えなくなるまで見送った。
彼は、翌日、飛行機に乗って東京に戻って行った。
そして、その夜、120男からすぐに電話が入った。
「昨日は、ごちそうさまでした。実は、今回の映画の話が、白紙になりまして。」
詐欺だと思った。
しかし、その話が本当ならば、一番困っているのは、この120男かもしれない。
『こちらは、大丈夫です。それにしても、平田さんも大変ですね。
がんばってくださいね。』
&さようなら お身体お大事に。。。と、そっと心の中で付け加えてたかもしれない。
そこから、ピタリと連絡もなかった120男が、勝手に近況報告を並べてきて、今度はいきなり、本を読んで感想を。。。と言ってきている。
とりあえず私は、彼にこうメールを打った。
実は、インディーズの中村 敦という人の曲が好きだというスタッフがいまして、正月明けから、アルバム16枚を焼いて私にくれ、毎日毎日聞いております。
ちゃんと聞こうと、16枚ひと通り聞いて、今は、2ラウンド目いや、3ラウンドしているものもあります。
なかなか味がある曲が入っています。
そしたら、まさに今朝、SADEの『チェリッシュ ザ デイ』という曲を聞いてほしいというメールが、今月末、自分の会社が閉鎖してしてしまうかもしれないという父子家庭でがんばっているお父さんから入り、これまた一生懸命聞きました。
救われたのは、たまたま机の中のMDボックスの中に、その曲がありまして、すぐに聞く事ができました。
SADEと書かれているMD。私はサデと読むものだと思ってました。
シャーデー?有名らしいですね。
しかも、英語なので、よく分かりません。
昔、チェリッシュという夫婦の歌手がいましたが、意味など考えた事は、ありませんでした。
辞書を引きました。
チェリッシュ=大切な
大切な日々、大切な日々、と歌っている事は確かです。大切な日々という事を、伝えたいという事だけは、理解してあげられた気がします。
そこへ平田さんからメールが入り、吹き出してしまいました。
さすがに、机の中を開けても、その小説は入ってはいません。
北海道の吹雪の中、言われた通りの某人気恋愛小説を求め、今、帰ってきましたよ。
文庫本だけ1冊残っていました。
 私には、分厚すぎます。。。。
 本は、あまり読みません。
 ただ、読むとあーだこーだと、聞かれてもいないのに、その本の内容に他人様を引きずりこむ癖があります。
とっても読むの遅いです。
感想、待っていて下さい。
アホだ。
私はまんまと、その本を読み始めているではないか。
あれも聞いてくれ、これも読んでくれ。
これが商売だったら、いいけどな。
ところが、始まってすぐに、いきなりのラブシーン。
しかも随分と、えげつない言葉によって細かく描写されている。
120男は、私にこんな本を読ませて、何を考えているのだ!!
と、思いながら、私は某人気恋愛小説『地獄の果てまで』の主人公のゆり子に自分を重ねて行った。

トイレ紙 #05

愛されたい原理?とほほ編


こう言っちゃなんだが、私は『なぜだか、もてない』(とほほ)
この間、人生初めて最新型の携帯に、たまたま変えてみた。
驚いた。
少なく見積もっても30人くらいに『かわいい!』と注目された。(こんな形で人気者になれる方法があったとは。。。。) はて?コレって。よくもてないOLが、流行プランドのバッグをいち早くゲットするのと同じかもしれないな!』と思った。(ほほう。。。これは発見?!)
この間、東京に行った。
コスプレ族が私の横をどんどん通り過ぎて行った。
これまた。人よりもいかに目立つかで、周囲からの気をひきたいのではないか?!
彼女らの気持ちが少し理解できた気がした(涙ぐましい)。
しかしながら驚いた。
こう言っちゃなんだが、コスプレする子は』なぜだかブスが多い!』(とほほ。。。)
プラス、なぜだか太っている。(気のせいだろうか?)

豚汁には気をつけろ

1月25日、朝、起きるやいなや、映画が観たくなった。
いや、観ないとまずいとさえ、思っていた。
前夜、ストレスが背中に溜まり、寝ていてもズキズキするほど、重症になっていた。
7年前、この仕事についてストレスが溜まると、過呼吸になって身体がしびれるという事を繰り返し、そのうち過呼吸ではなく、胸がキューンと痛くなり、その痛みが耳にきて、暫しうずくまるという時代を経て、現在は、疲れやストレス背中に溜まるようになった。
これを放置しておくと、今度は吐き気が出てくるようになってくるのだ。
この日も私は、その状態に陥ってしまった。
それは『元、調理人ですから』という肩書きを言い続けている1人のスタッフに原因がある。
彼の車には、包丁のセットがいつもスタンバイされている。
日曜日の夜に小さなイベントがスタジオであり、『来て頂いたお客様をもてなすために、何をするかみんなで考えたら?』と、私は、出張先の仙台から提案した。
元、調理人ですから君からメールが入った。
「みんなで話し合った結果、豚汁かコーヒーゼリーが上がっています。
どっちがいいですか?」
「豚汁でしょ。。。」
厳寒の札幌の冬にふさわしいのは、コーヒーゼリーか??。
心の中は、んなもん、豚汁に決まってるだろ!と思っていた。
しかも、私が手伝う事がないので、元、調理人ですから君のワンマンショー、力の見せ所である。
日曜日の昼、私は会社に電話を入れた。
そうすると、元、調理人ですから君は、ちゃんと買い出しに出ていた。
ところが、出張から帰ってきたら、お鍋いっぱいの豚汁はあったものの、元、調理人ですから君の姿は、見当たらなかった。
何やら、頭痛がして早退してしまったらしいのだ。
それから元、調理人ですから君は、頭痛を理由に3日間、蚊の鳴くような声で『休みます電話』をしてきては、頭痛を訴え、会社を休み続けた。
ちなみに、コーヒーゼリーの提案は誰だったのか?と、他のスタッフに聞いてみた。
なんと、元、調理人ですから君の提案だった。
『こんな事になるなら、僕が作っても良かったんですけど、豚汁くらいなら』と、スタッフの1人「長所=腰が低い所、短所=腰が低すぎる所」君が言った。
精魂尽き果てて作った豚汁は、元、調理人ですから君の過去の肩書きを汚す事なく、『美味しかった』という事は、記しておこう。

何でもチャレンジャー!

実は、辞めたスタッフに、好奇心旺盛すぎる君がいる。
彼は、制作デザイナーで、現在でも、いい付き合いをしている。
元、調理人ですから君が4日目突入になるかの日、好奇心旺盛すぎる君は、制作物を持って、来社する予定だったが、こんなメールが入った。
「松川さんおはようございます。
昨日、試しに飲んだバイアグラがいまだ効いていて、歩行やトイレに支障をきたしている状態なので、今日はお昼過ぎの 13?14時あたりに御伺いしようと思っているのですが大丈夫でしょうか?」
『やっぱり何でも試すんですね。』
「松川さんバイアグラの件、補足いたしますと...歩行障害はまぁお察しの 通りなのですが、おもしろいのがトイレなんです。当然smallの方は排泄形態になっていないので、なかなか操作が困難なんですが、問題 はBigの方で、普通お腹に力を入れると顔に若干血が昇りますよね?なんですが、その血が降りてこないで顔に溜まりっぱなしになるんです。なので、トイレから出て鏡を見ると顔が真っ赤でパンパンになってしまうんです。不運にも、たまたま今日はお腹がゆるくて何度もトイレに行かなくてはいけなく、出てくる度にいちいち顔がパンパンなんです。周りの人に隠すのが大変です。ちょうど酒飲み過ぎた時のような顔です。うんこしてるだけなのに...。やはり本当に必要なときに飲むものなんだと、痛感しました。」
『現状況から考えて、今日は、18時くらいにしましょう!力入れると、脳内破裂の危険があります。自然に垂れ流すようにして下さい。』
「力を抜いてバイアグラでウンコ死しないように気をつけます。では 18時くらいにお伺い致します。」
なんとも汚い話だが、こうして私の一人映画の時間が作られたのである。

トイレ髪 #06

おばさんって、ほんとイヤね!編

昨日、ガーデニングコーナーでお花を見ていたら、通りすがりのおばさんが
何やら私の横で、赤ん坊に『これは、お花。
お花って言うのよ。分かる?
お花だよ。きれいでしょ?おー、はー、なっ。』と、あんまりしつこく言っているので、
横を向いたら、なんと抱っこされているのは、犬ちゃんだった!!
分かるはずないだろー!
しばらく腹をたてていた。
我輩は、昨年からネコを2匹育てている。
今朝、ネコちゃんにご飯を上げて、会社に行こうと思った瞬間、
今日も遅くなるし、毎日、毎日、ネコちゃんも退屈だろうなー。。。。
と、考えてしまった。
『よし、今日は、テレビでも観てなさいね』と、言って、
我が輩はNHKのこども番組をつけてきてあげたのである。エヘン!
分かるはずないだろー!って?

Theおばさん

12時30分から上映される『カジノロワイヤル007』が見たかったのである。何やら、女が最後のどんでん返しで007を裏切るが、そこには本当の愛があったとかないとか?けっこう、私に合っているストーリーではないか。
札幌駅のステラプレイスの7階にシネマフロンティアという新しい映画館がある。上映開始から15分過ぎると、入場させてくれないと、ホームページに書いてあったのをチェックした私は、札幌駅まで着くと、急いでステラプレイスのエレベーターの所まで走った。
けっこうすごい人が、エレベーター前に待っていて、一度地下に下がったエレベーターの箱が1階に戻ってきた。7階まで、各駅停車していくのだろうなと思って乗り込んだら、なんと途中下車が誰もいない。あれよあれよと、エレベーターの箱は、7階に着いてしまったのだ。このお昼の12時40分に、映画館にみんなが向かうのか?
答えは、『向かうのである。』
チケット売り場の前に、列が往復していた。どうしていいか分からず、とり合えず並んでみたが、007の上映時間から15分は過ぎてしまう。呆然としながら考えていたら、前の人との距離が少し空いてしまった。すかさず、そこに後ろにいたおばさんが入りこもうとした。すぐに気付いて、そのおばさんの横入りは成功しなかったものの、それが悔しいのだろうか。
ありがちと言えば、ありがちなのだろが、わざとギュウギュウと背中を押してくるのだ!!
『まじですか』と思いながら、これが、おばさんの実態なのだ!と、笑いたくなる反面、前の人に玉突き事故にならないようにするので、私は精一杯だった。
 予測どおり、007は15分を過ぎているため、入場を断られ、仕方なく13時からのマリーアントワネットを観る事になった。
そこで分かったのだが、この日はレディースデーで、映画が¥1000で観れる日だったのである。
どおりで、主婦が多い訳だ。
『マリーアントワネットは、席も僅かとなっております。
2列目の一番端か、最前列の真ん中となりますが、どういたしますか?』
「んーーー。では、最前列の真ん中でお願いします。」
一番前かあ?、首が辛そうだな?と、思いながら、私は与えられた特等席に腰を下ろした。
腰掛けて、次第に気付いたことがあった。
左側に座っているおばさんは、1人で観に来ているようだ。
さて、右側はどうなんだろう?
右側も、その先が空席になっている事から。
1人で観に来ているおばさんだという事が分かった。よくよく見回すと、あの人もあの人も1人?という程、一人映画を楽しむおばさん達ばかりでないか。
特に、最前列は一目瞭然、1人映画を楽しむおばさん達の品評会になっている。
そこの中央に有り難くも、私が座っているのである。
1人映画の良さは、男を必要としない女が、カップルが多い中を縫って、かっこよく一人で映画を観終える事に良さがあるのだ。
なのに、おばさん達の真ん中に座っている私は、どう考えても、どう想像してみても、かっこよくなかった。
それでも、映画の内容に最低ひと雫の涙を流せれば、それはそれで良かった。
ところが、マリーアントワネットは、豪華な衣装や、生活ぶりを披露しただけで、なんとなんとそのまま終わってしまったのである。
涙も、感動も、驚きもなく終了。
みんな『へ?ここで終わるの』って思っていないのだろうか。
もちろん、1人で行った場合は、映画の感想も口に出さず、心に閉まって退場するのが1人映画の凄み?なのである。
そして、ストレス解消に行ったはずなのに、そのままマッサージに行きたくなるほど、首と背中が疲れてしまっていた。
 呆然としながら退場し、エレベーターを待ったが、多くのおばさん達が、6階のレストラン街にエスカレーターで降りて行く。
気分直しに、少しフラフラするか。。。と、私もエスカレーターを下りた。
そこで、中国料理店のあんかけ焼きそばの見本が目に入った。
実は、あんかけ焼きそばは、私の大好物にあたる。
あんかけ焼きそばに、現在の落ちてしまった私を助けてもらおうと、そのお店に入店した。
外の景色が見える所に通してもらった。
『映画の半券はお持ちですか?』
私は、ポケットの中をまさぐり、半券を出した。
レディースデーにこの半券を持って、レストランに入ると、飲み物か、シャーベットなどのデザートが、サービスされるのだという。
メニューを置いて、店員さんは立ち去ったが、私の狙いは、あんかけ焼きそばと注文が決まっている。
聞きたいのは、お金を加算すれば、ビールも可能かどうかという事だ。
この納得できないモヤモヤを、外の景色を眺めながら、ビールを飲む事で吹き飛ばそうと思ったのだ。
なんと凄い事に、サービスの飲み物には、ビールも含まれていたのである!
思わず私は『素敵なシステムですね!実は、マリーアントワネットが最悪だったんです?。』と、愚痴ってしまった。(店員さんも、そんな事、いちいち映画を観たお客さんから言われたら大変だろうに。) しかし、店員さんは、少し微笑みながら立ち去って行った。
 ふと、前方にたぶん同じく映画を見終わった主婦が、こちらを向いて座っていた。
「失敗した。
反対の席に座れば、向かい合う事は無かったのに、、、」と、少し悔やんだ。
「これから会社に戻るのに、一杯のビールを楽しむ事の出来る私が、なかなか好きだな。」と、思った。
ところがもう一度、前方に主婦に目を向けると、彼女もビールを頼んでいるではないかっ!
今日は、ことごとく、かっこつけられない日だと思った。
外は、深々と雪が降っている。
好奇心旺盛君は、バイアグラの後遺症とまだ戦っているのだろうか。
向かいの主婦が、先に席を立って帰って行った。
私は、もう少しだけ、この時間を楽しもうと、バッグの中に持ち合わせていた『地獄の果てまで』を取り出し、残されていた数ページを読み始めた。
さきほどの主婦は、これから帰宅して晩ご飯を作るのだろうか。
そんな事を考えながら、私は、この小説を読み終えた。
背の高いスラリとしたゆり子33歳は、12歳年下の北大生と駆け落ちし、ドロドロの展開になりつつも、ハッピーエンドを匂わせた形で終わった。
映画で下がってしまったテンションが、にわかに上がったが、天候は変わらない。
深々と雪が降り続けている光景を眺めながら、本をパタンと閉じ、私は、ふと、ある決意をした。
『よし、会社まで走って帰ろう!』
今日居合わせたおばさん達はもちろん、マリーアントワネットにも、これだけは真似できなくてよ。おほほほほほほほ

音の御馳走

札幌の『市民 会館』さんは、客観的にみて古くて朽ちていたイメージがあった。
その『市民 会館』さんが2007年1月31日、佐野元春や奥田民生、山崎まさよしなど、豪華なメンバーを呼んで、永遠の眠りにつく事になった。
そして、その最後のコンサートに、ホノルルマラソンの相棒が私を誘ってくれた。
どうだ、いいだろう!という気持と、市民会館の最後の日を一緒に黙祷を捧げてくれ!という意味と、今日の夜は、早めに上がっているので、会社にいませんよ!という3つの気持ちが入り交じって、何人かにメールを打った。
映画一つ行く時も、なぜか私は周りに言いふらしてから出かける。
『今日ね、焼き肉食べに行くのー!』と、言っている子供みたいなものだ。
『今日は、市民会館 最後の日に行ってきます。』『はー、最後なんですねー。楽しんできて下さいね』
と、まあ、ありきたりの言葉を頂きながら、私は、会社を脱走するかのように市民会館に向かった。
会場前でホノルルの相棒の美女から渡されたチケットを見ると『札幌市民会館 最後の日』と、記されていた。
そのまんまやねん???と思いながら、2階席に通じる階段を上った。
すぐに感じた事は、出演者もさることながら、客層もなかなか年期が入っているという事だ。
時代遅れの古くさいイメージの市民会館も、これが最後と!なると、こんなに多くの人が『市民 会館』さんを惜しんで集まってきてくれているのである。日本人やねんと思った。
自分の席を見つけ、腰を降ろした。開演前から、客の期待感が伝わってくる。
右隣りは、ごく普通の60歳位の女性が1人でいらしているようだ。
しかし、ふと気付くと、右隣りのおばさんが、身体をくねらせはじめた。
何が起きたかと思ったが、いわゆるもう早やノっているのである。
しかも、開演前に小さく流れているBGMにだ!?
それどころか、曲が終わる度に、拍手をするのである。
想像してほしい、かすかに流れるBGMにだぞ!?
心底、まずい席に座ってしまったなと思ったが、所詮どうする事もできない。
こうなったら、ステージと隣のおばさんの行動をいっぺんに楽しむしかない。そう思う事に力を注いだ。
開演19時を回ると、今回のイベンターであるWESSの若林さんが舞台に立って挨拶をはじめた。
彼が、今回のこの企画を提案し、今まで培われた信頼関係を生かし、
佐野元春他のアーティストを集合させた人物なのである。
裏方業をやっている私としては、とてつもない共通点を感じたが、うちの社長だったら、間違いなく自分が出るに違いない。
と、想いながら、彼の熱いメッセージに聞き入った。
若林さんに、会場全体から『ありがとう』の大きな拍手が送られ、ライブがスタートした。
HALL AID BAND、レオナ、Chara+土屋公平、CHABO、私にとっては、よく知らない人がいるが、隣のおばさんの反応はイチイチすごい。
相棒が、『たぶん会場全部見渡しても、松川さんの隣のおばさんは1位だわ』と、讃えてくれた。
嬉しかった。
山崎まさよしが歌い始めた。のどちんこにマイクをさらに内蔵しているかのような声量だった。
今までの人も上手なのだが群を抜いてうまかった。
続いて、佐野元春。ちょっとした仕草にかっこ良すぎるという歓声が方々で聞こえた。
次に酔っぱらって出てきた奥田民生。
私的には、あんまり好きじゃなかったが、若者と違って、なかなかトークが面白い。
隣のおばさんは、もちろんウケ過ぎなくらいウケている。
そして、ラスト!誰もが聞かされていなかったのであろう、あの人物がマントをまとって出てきて、会場の盛り上がりが大ピークに達した。
忌野清志郎到来である。
ファンでなくても、ファンであっても、彼の存在の大きさには圧巻した。
『そんな夜に、君に乗れないなんて?』
この歌詞が引っかかって、紅白に出れなかったんだよな?、んー、やっぱりエッチだもんな?なんて思いながら、どれどれ、おばさんはどんな感じだろうと、私は右に視線をそっとずらした。
なんと、隣のおばさんは、とうとう教祖様を仰ぐような形となっていた!
その姿は、浅草の雷門で、煙を自分に仰いでいる人を大袈裟にしたような形だった。
両手を広げ、音を自分に浴びせているのだろう。『おばさん、そこまでやってくれて有り難う!』そんな気持ちにさえなった。
最後に出演者全員が出て、WESSの若林さんが中央に引っぱりだされた。
今日ほど、裏方の仕事の醍醐味を味わえた事はないだろう。
若林さん、良かったな!これからも、よろしくな!
って、勝手に名前出したけど、一度も会った事ないんだな。
えへへ。
だけど、『市民 会館』さんは、享年48歳だった事を知って愕然とした。
私も、48歳になったら、客観的にみて古くて朽ちたイメージになるのかな。とほほ
お手入れしなくっちゃな。
翌日、何人かにまた言いふらした。
『市民会館 最後の日のコンサートは、音の御馳走を沢山食べたという感じでした。』
今度は、『どうだいいだろう!』という気持ち一本で。笑

トイレ紙 #07

耳が遠くなった2人のおばあちゃんの会話?病院の待合室での巻き?

あんたナニで来たの? あたし、車で来たから乗せていくかい?(これだけでも声は待合室中に響いている)
え?(聞こえないらしい)
あんたナニで来たの?(そっこまで大きな声で言わなくても)
タクシー(一言)
誰がさ(自分で聞いておいて、誰が?は、ないだろう?)
あたし(これまた一言。お年寄りには、余分な修飾語はないんだな。なるほど。)
じゃあ、タクシーで帰んなさい! あんた、タクシーで来たんだから。アハハハハハ(このおばあちゃん、なんのために聞いたんだろ?それとも高レベルなシャレなのか?)
で、あんたは汽車で来たのかい?(だから最初に、車で来たって言ってたのにい?。どうなるんだろ。。。)
。。。。。。。。。。。。。。。。。(あららららら、聞こえてないんすか??あーあー、そのまま玄関で靴はいて帰るんだ?。おばあちゃ?ん!)
(ぶっはっは?)

差別化(2月14日)

ここ数年、私は、バレンタインデーにチョコをあげた事がない。
お歳暮のようにチョコが配られ、誰もが作れる簡単なレシピ本も出され、何やら、友チョコというのまで流行り出して、子供達が作るレベルも非常に高くなってきている。そうなると、義理チョコも本命チョコも、何の差別化もはかれやしない。
手編みのセーター付きくらいじゃないと、どれもこれも一緒だ。高校時代、休み時間になると、女子が一斉に手編みのセーターに熱中していた時も、私は一切編まなかった。大半は、手編みのセーターは、ださくないだろか。
だから、もし、そのセーター手編みですか?と、聞かれたら、どこかダサイのだと思った方が正解だろう。笑
私は、決めた。
今後、バレンタインには、誰にもチョコを上げない女になろうと。(ついてない人生)×(くだらない決意)=私
そう思って、この日、免許更新に出かけた。
人は至って悪くないのだが、スピード違反など、殆ど、納得いきづらい違反でよく捕まる。
そのため、2時間の違反講習である。
実は、誕生日が1月14日なので、バレンタインデーのこの日が最終期限だったのだ。
危うく流すところだったが、本気で流してしまうのも、私の場合は、世のため人のためではないかと真剣に考えた。
もし、身近で信頼できる人が『松川さんの場合は危ないから、もう運転はやめた方がいいんじゃない?』と、背中を押してくれたら、私は本当に流してしまうのに、誰かそう言ってくれないだろうか、と、何人かに『もそっ』と言ったものの、残念ながら誰に相談しても、『もったいない』、『まだいいんじゃないか』という回答だった。
でも、これで、交通刑務所にでも入る事になったら、みんな絶対恨んでやるぞ!と思いながら、免許更新に向かった。
入り口に、献血車が止まっているのが目に入っていた。
最近、ストレスで、どうも血が濁っている気がしており、少し抜けば、新しくきれいな血が再生するようなアホな気がして、帰りは絶対献血するぞ!という気合いでいた。
最近、私は初志貫徹するのが好きだ。
初志貫徹すると、とてもすっきりするという効果がある。
そこには、優柔不断な気持ちがあっては、初志貫徹は達成しない。
そこには、くだらない意地が必要になってくるのだ。

更新所のシャレたギャグ?

講習は寝てしまうと怒られる。
前回の更新の時には、しばらく下を向いていただけでも、頭を叩かれた。
違反者のくせに寝るなと言わんばかりに。
今回も、そういう教官なのだろうなと思って、言われた通りの席に腰かけた。
時間になり、担当教官が簡単な自己紹介を始めた
毎回、同じ話ばかり繰り返す毎日の仕事なんだろうな、と、勝手に同情したりする。
彼らも少しでも、自分の話に感心を持ってくれるように、それぞれ努力しているのだろう。
彼は、こんな事を言い出した。
『この講習の終わりは、16時20分ですけどね、時間通りに終わりますからね。』(当たり前だ。。。)
『で、休憩はね、沢山とりますからね』(それより、早く終わらせてくれた方が。。。)
『後ろに行きたい人はね、行っていいですよ。
で、最後はね、最初の席に戻って下さいよ。』(めんどくさいよ。そんなの。)
『で、普通はダメなんですけどね、飲み物を飲んでいいですから。
内緒ですけどね、私の授業では、飲んでいいですからね。』(って、言われても、誰も飲み物持ってないしっ。。。) 実は、この教官、以上の事を4回繰り返した。
その度に、『だから、飲み物持ってないしっ!』と、思ったが、4回目言われた時には、さすがに吹き出してしまった。
やっぱり違反者だからなのだろうか、こういうイジメ?もあるんだなと思った。
後半はビデオを見るので、話を聞くよりは楽チンだ。
ところが、このビデオが開始すると同時に、私は大物と出くわしたのだ。
ビデオの内容は、人間には無くて七癖があるというのがテーマで、男の人が貧乏ゆすりをしているシーンから始まった。
すると、いきなり初っぱなから『あっはっはー』と、大声で笑う人がいるのだ。
こんなシーンで、あそこまで笑えるなんて、きっと、この人は、自分に貧乏ゆすりの癖があるのだな思っていたが、今度は、女性がいかに『思い込み』が激しいというシーンが出ると、またまた1人で大ウケしているのだ。
きっとそういう奥さんをお持ちなんだろうなと理解しようとしたが、あそこまで大袈裟に笑わなくても。
あまりにものオーバーリアクションに、もしかしたら彼は、サクラ? 回し者?とさえ思ってきてしまった。
まあ、免許更新所に、こんなシャレたサービスがあってもいいのかもしれない。
おかげで、眠気も飛び、そして、初志貫徹で献血ばっちり!!
札幌の北に位置する手稲は、外が猛吹雪になっており、一瞬心が揺らいだが、そんな優柔不断な事では、初志貫徹など出来るわけがない。
そして、血を抜きながら、私はある決意をした。
『今年のバレンタインデーからは、チョコの代わりに真っ赤な血を薔薇まこう。』と。(つまらない人生)×(ボランティア)=私
バレンタインデーキッス、大人の味ね!しゃらららん♪のメロディーが、
バレンタインデー献血、大人の味ね!しゃららん♪に変わって、何度も頭を駆巡った。

決意その2

40歳の誕生日の前日、近くにあるアリオをふらふらした。
自分癒しのために、マッサージオイルなんぞ買いながら、30代最後の日を楽しもうと思い、ひたすらふらふら。
そこで、たまに目にする似顔絵コーナーが目に入った。
普段は、通り過ぎてしまう私だが、30代最後の微妙な女心が、似顔絵コーナーの席に私を座らせた。
 画家の名前は、多才親父(たさいしんじ)。意図が分かりやすい。
私はただの1人の客。無駄な事は、なるべく喋らないでおこう、喋らないでおこうと思っていたのだが、5分経過した頃には、『夕張や老人施設などに行って、一緒にボランティアをしたいですね!!』という話題になってしまった。
彼は、ずっとそう思っていたと言うのである。それが、どうしてこういう場で一つの線がつながっていくのだろうと不思議に思う。
これが、念というものなのだろうか。
 早死にする予定だった私の母は、珠算教師なのだが、生徒によくこういう言葉を言った。
レッスン1
『想い、思い、念いが、実現に至る!』
そんな話をしながら、私の似顔絵が出来上がっていった。
旅先で必ず書いてもらう人、1年に1度、毎年、同じ人に書いてもらったり、毎年わざと違う人に書いてもらう人がいるという話を聞いて、いろんなマニアがいるものだなと感心した。
そして私は、決意した。
『誕生日の前日に、自分の似顔絵を書いてもらうおう!』と。
 彼は書きながらこう言った。
『自分の絵は、目の前の人が、漫画のキャラクターで出てきたら、どんな感じなのだろうかと思って書くんですよ。
なんで、あとから愛着が出て来る絵だって、よくお客さんに言われるんですよー』と言った。
手渡された時に、『これ、私に全然似てないよな。』と確かに思った。
そして私は、新たな決意を自分の中に増やして、39歳最後の日の昼を満喫して、夜の宴会に足を運んだ。
宴もたけなわになり、一人一人がその場に立って、挨拶する事になった。
『どうも、ホノルルマラソン完走の松川です。
そして、私は、あと数時間後に、なんと40代の仲間入りをさせて頂きまーす。(先輩が多いので、間違っても、40歳になってしまいます、なんて悲観的な言い方はタブーだ。)しそこで、本日、私は自分の似顔絵を書いてもらいました?!』と、しまっておいた絵を出したのだ。
すると、どよめきが起こった。
なんと、その絵は、私の隣にいた、フラワーデザイナーの成田さんそのものだったのだ。
成田さんだ!成田さんだ!で、その場がどよめきの大爆笑になってしまった。
多才親父さんへ 『書いて頂いた絵は、成田さんという方にそっくりでした。
今度、機会があったら、その成田さんに会わせます。。。。。』
そんなファックスを送った。
「他人に似てたという事は、素直に似てないという事ですね。」と、返事が来た。そして、彼は次なる行動に出てきた。
 数日後、彼から、封書が届いたのである。女性の似顔絵だった。
リベンジか?と、思いきや、今度は、北海道で放送されているのりゆきのトークという番組でリポーターをしている『徳永さんの似顔絵』を漫画風に書いて送ってきたのだ。
徳永さんといえば、綺麗どころのリポーターである。
なのに、なのにだ。徳永さんがあくびをしている、決して後になっても本人にとって愛着のもてないであろう似顔絵を送ってきた。
多才さん、なかなかのチャレンジャーである事は間違いない。
私は、どうしようかと思って悩んだ。
しかし、彼のチャレンジャー精神を無駄にしてはいけない。
多才親父さんのご冥福を祈りながら、私はそれを徳永さんに送った。

小さな決意

今年、私はボウリング以外にも小さな決意をしていた。
何だか、決意だらけで、そのうち決意に振り回され、固まってしまいそうになる気もしてきた気もしないではない。
 しかし、2ヶ月で3人の女性スタッフの誕生日があったが、このプレゼントは、なかなか喜んでもらえた。
女性が女性に送る、Tバックである。
なかなかお勧めである。
ただし、私は1枚しか持っていません。
色は白です。
来年、増える事を祈ってます。うふっ
レッスン2 プレゼントに迷ったら、自分がもらって嬉しいものを差しあげましょう。

みのもんたさんに相談です!

先日の朝、誰もまだ出勤していない会社で、いきなり目の前にいた金魚のエサ担当の社長から『まつかわー!!』と、でかい声で言われたんです。
目の前にいるのに、あまりにもの声のうるささに、私、わざと返事をしなかったんです。
そうしたら当然、鬼のように怒りだし、なんで返事できなんだ!と、まずぶっ叩かれたんです。
次に『帰れ!』と、首根っこつかまれ、机に何度もたたきつけられ、鼻が折れる所だったんです。
とりあえず帰るにしても、メールチェックだけはしてから帰ろうと思って、そのまま無視していたら、その金魚社長は一人で怒りまくり続けて。。。。。
そしたら、そこに宅急便の人が『すみませーん』と言って入り口に来たんです。
なかなかすごい展開になったぞ。と思っていたら、その金魚社長は気付かないまま怒鳴り続けていて、けっこう面白いので、そのまま放置しておいたんです。
そうしたら、2度目の『すみませーん』というお兄ちゃんの声を
私の反論と聞き間違えて、今度は『なに?っ!!』と、金魚社長がが聞き返し、また宅急便のお兄ちゃんが『すみませーん』と言い、そこにまた、金魚上司が、15個もある水槽の金魚にエサをやりながら『なに?っ!!』と言い、私は内心、これはすごいぞー!と、じっとしていたら、なかなか根性あるお兄ちゃんで、『あのー、おとり込み中すみませーーん』と言い、やっと状況を把握した金魚社長が、バツ悪くトコトコと出て行って、金魚のエサ片手に伝票にサインして戻ってきたんです。
お兄ちゃん、よく出直さなかったなと、感心するやいなや、今度は、横にあった黒いゴミ箱を頭からスッポリかぶせられ、『返事しろー!!謝れー!!』と、怒鳴られながら、ボコボコに叩かれたんです。
ゴミ箱の上からだったので、痛くはなかったんですが、なんでまた素手じゃないんだろうと思ったら、顔色悪い専務が『おはよーございます』って、出勤したんです。
宅急便のお兄ちゃん、絶対『ヤクザの会社』と思っただろうな。
ぜひ、仲間に言いふらしてほしいと思ってます。
返事せず
暴力受ける
この会社
早く辞めたい
ヤクザーズスタジオ
それでも、みのさん、私、トイレにこう貼ってます。

トイレ紙 #08

会社のために自分があるのではなく

自分のために会社はあるのだ

出たっ!!280男

この間、好奇心旺盛過ぎる君が、制作の仕事の件で、280男のところに来た。
そこで、私の話が出たという。
私も普通の女だ。
なんの話か気になった。
そこで、280男は、そっとメールで教えてくれた。
280男。。。まつかわさん、最近、老けたと思いません?
好奇心旺盛君。。。 いやー、僕も、ホントそう思ったんですよー。
こいつら、悪魔だ!
『普通、そんな事、本人の私に言うかー?
私が、なんか、あんたに悪い事したかー?』
「だって、あの日は特に、老けたゾンビのようでしたよ。」
この日私は、
マラッカ海峡よりも深く沈み
エベレストよりも高く、心ここにあらず
北極に放り出されたように、固まりました。
老けたゾンビ。想像しただけで忌々しい。
280男!お前が死んだ時の棺桶には、老けたゾンビも入れてやるからな!
くそーーーっ!!!
 もう一人の悪魔は、好奇心旺盛君だ!
こうメールを打った。
『好奇心旺盛君も大したもんじゃないですか。
発言の自由とはいえ、さすが何でもチャレンジャーですな。
好奇心旺盛君、近々、赤ちゃんが生まれるらしいじゃないですか。
もし、君が出産するのだったら、確実にこんな事を祈ってあげよう。
赤ちゃんよ
めちゃくちゃに暴れながら
出口までおいで
そして、そこまで来たら
またUターンして
しばらく貧乏ゆすりしながら待つのだよ
それを何回か繰り返して
飽きたころ
最後には
横になって出ておいで』
しばらく経って、好奇心旺盛君は、3月11日、こんなまともなメールを送ってきた。
「おかげさまで無事赤ん坊が生まれました。3130gの女の子でした。出産は16時間くらいかかったのですが出てきた瞬間、赤ん坊と目が合い思わず涙が吹き出ました。」
『昨年、広州から戻ってきて思った事ですが、いろいろ広州の悪口を立て並べながらも、広州の事を思うと、妙にドキドキするという事でした。たぶん2度目には絶対味わえないであろう、“この最初のドキドキ感”というのを、すごく大切にしなくちゃいけないなと思いました。
人との出会いもそうなのかなと思うと、夫婦の関係ももっとうまくいくのにとか。
あー、子供の事、もっと大切にしなくちゃとか。
なので、昨日の“ドキドキ”をずっと忘れない 父親&夫で いて下さい。』 byひなこ
良い事言うな私。そして私は、好奇心旺盛君の子供の命名を授かった。

トイレ #09

あのね先生、僕のおしりは、カチカチ山なんだ。
カチカチ山って、何?
お父さんと、お母さんがね、パチンコで負けて帰って来ると、僕のお尻にタバコを押しつけるんだ。だから、僕のおしりはカチカチ山なんだ。
そっかー、痛いね?。
僕、学校でみんなから、いじめられてるんだ。
どうして、いじめられてるの? 僕ね、すっごく臭いんだ。お風呂に入れてもらえないんだ。だから、皆から『あっち行け』『臭い』とか『ばい菌』って呼ばれてるんだ。僕の部屋は、押し入れなんだ。押し入れだけが僕の部屋なんだ。そこに、ヒモをかけて、夜寝る前に死んでしまう位、思いっきりヒモを引っ張るんだ。僕はいつでも死ねるんだ!と思ったら、安心して眠れるんだ。
 これは、小学校4年生の男の子と、夜回り先生『水谷先生』の電話での会話です。バッケンが終わって、ふとテレビを観て、この場面を目にしました。ショックで今でも涙が出てきます。暴走族にレイプされ、エイズに感染し、50キロあった体重が、20キロになり目の回りも唇も真っ黒になり、最後はモルヒネを打ってもなかなか死ねず、モルヒネが切れては、ウォーウォーと叫び、叫ぶたびに関節が外に飛び出し、苦しみながら死んでしまった女の子。いじめから引きこもっていた子が、近所のおばあちゃんのゴミ捨てを手伝うようになり、誰かのためになっている事に喜びを見い出し始めていた時に、朝、学校のいじめっ子に会い、『お前まだ生きてるんだ?』と言われ、とうとう自殺してしまった子。仕事でお父さんは嫌な思いをしてくると、お母さんに当たる。お母さんは、子供の成績が悪かったりすると子供に当たる。その子供は、さらに自分よりも弱い者に当たる。いじめの法則なのかもしれないね。みんな、そんな悲しい子にならないでね。

1人ボウリングの夢、破るる!

この間、会社の玄関で、指に包帯を巻いて立っている男が目に入った。
彼は何者かというと、モデル養成のちびタレントの出待ちを待つ、ヲタの主要メンバーの一員である。彼は周囲から忍者と呼ばれている。
ヲタとは、オタクの事を言うが、うちに来ているヲタ達には、ハンドルネームとは違う立派なニックネームがついている。
代表的なのが、革ジャン、師匠、バサラ、イエロー、亀ちゃん、むーぱんぱ、王子、うー、ちぇき、パー、ぴょんなど、訳の分からないあだ名をお持ちである。
だが全員が、彼女はお持ちでない。
 職業的には、医療関係、自衛官、住職、占い師など、なんで?という人達が、事務所の玄関を居間がわりに集まってきている。
そしてこの主要メンバーのヲタ様達は、いかなる小さなイベントの時も、必ず来てくれるという有り難い変人ぶりを見せてくれている。
一番古いのは、なんてったって師匠だ。9年近くなるのではなかろうか。
この間、誰一人浮いた話はない。誰か1人くらい結婚したっていいだろう!と思うが、一般的に普通の人の集まりではないのは冷静に考えて確かだ。
 そんな中で、忍者は、7年前から事務所に出入りしているが、挨拶どころか、ニコリともしない。よっぽど不満を持ちながら、うちのイベントやスタジオに足を運んでいるのだろうと思っていた。
そんな彼と、昨年、急に話すきっかけが出来た。
トラックに跳ねられ首を骨折、脳挫傷、頭蓋骨骨折に遭ってしまったみっちゃんに、千羽鶴を折っていた時の事である。
千羽鶴、学校のみんなとかでは何個か折った事があるが、この時私は初めて折ってみた。
それが、これまた折っても折っても、千羽には程遠い。
お盆の間、帰省中の車の中でも、どこでもとにかく折った。
折っているうちに、千羽鶴のすごさを私はこの歳になって知りえる事が出来た。。
折っている間、少なくとも、ずっとみっちゃんの事を考えていれわけである。テレビを観ていても、何かの話題で笑っていたとしても、手先と脳は、その相手の事を思っているわけである。
この『思い』が『念い』に変わって、願いが『叶う』わけだと私は解った。
ふと考えると、手編みのセーターも同じである事に気付いた。手編みのセーターをダサいものと決めこんでいた貴方!
貴方は間違ってます!って、
私だ。とほほ
 この間、マンションのエレベーターで香水をこぼしたヤツがいる。
何日も、とれないじゃないか!犯人は誰だよ!!って、 私だ。とほほ  話が逸れたが、千羽鶴を早く折り上げてしまいたいめに、祈りをこめずに鶴を折ってもらった所で意味がないのだという事をしみじみ感じ、これはアンチョクに他人を頼ってはいけないと、必死に身内で織り上げようと決意した。
 しかし、お盆の間じゅう、血眼になって折っても、七百羽くらいでまだ完成しなかった。
お盆明けの会社で、仕事が終わる頃1人で折り続けていたら、そこへ忍者がひょっこり現れたのである。
そして、すうーっと手伝ってくれたのである。
さすが忍者だと、この時思った。
鶴を折りながら、まずは忍者の名前の由来を聞いたところ、昔乗っていたバイクの種類が忍者だったらしい事が判り、無口で暗いという彼の性格とは無縁で、がっくしだった。
次に、彼の仕事を聞いた。
なんと私が、人生で一度やってみたい仕事の一つだった。
『市役所のゴミ収集』の係の仕事である。
あの青いゴミ収集車に乗って、ごみ置き場の前に来ると、車からさーっと格好良く降りて、時折、分別されていないゴミに『頼むよ、ちゃんと分別してくれよ』と、ぶつぶつ世間に不満を持ちながら、次のゴミ置き場に、素早く移動するのである。
一石二鳥でダイエットになりそうだし、人の振り見て我が振り直せで、ゴミの分別にも、徹底的になれそうな感じがする。
 そして、忍者の喋らない原因は、世間に不満を持っているのではなく、極度の人見知りだという事も分かった。
そんな忍者の指の包帯の理由を聞いてしまった瞬間、嫌な予感がした。
『どしたの 指?』
「ボウリングで。。。」。
無念だ。実に無念だ。
私の1人ボウリングの目標が、この時点で崩れ去ってていくのを感じた。
『もちろん、1人だよね?』と、バカな事を聞いてみた。
2006年12月31日の大晦日の日も、彼は5時間もボウリングをやり続けていた事を語りはじめた。
無論、1人である。しかも大晦日にだ!これ以上の寂しい馬鹿げた話には、私は逆立ちしても叶わないだろう。
 そして、彼はその後、こんなメールを私に送ってきた。
『まつかわさん、この前の日曜日は、1人で15ゲームやりました』と。
「忍者さん、この際、今年、300ゲーム目指して、がんばって下さい。」
「そして、いい加減、友達作って下さい。」
とは、言えなかった。
が、しかし彼は最近、事務所のヲタの中でも、どんどん友達が増え、笑っている姿をよく見かける。
そして、今度は頭に包帯を巻いてきた。
会社のシャッターに頭をぶつけて、何針も縫ったらしい。
全然、忍者じゃないじゃん。忍者卒業ですな。

トイレ紙 #10

なにか一つでいい

ずっとやり続ける事が大切なんだ

やり続ける事で はじめて

  君が 気付けた事

  君が 感じとれた事

それが 君にとっての

  君だけの 財産になるのだから

空腹が織りなすハーモニー

この日、私は、朝から何も食べてなかった。
朝からステーキを食べられるほどの私が、ずっと食べる時間を見つけれず、働いているのである。
夕方になると、多少ふらついてきた。
『よし、やっと食べに行くぞ!』と思ったら、スタッフ募集広告を見た人が電話をかけてきて、『近くにいるので今すぐに面接をして欲しい』と頼んで来た。
なかなか勝手な男だと思った。
だが、この押しの強さは、逆に言うと活かせるかもしれない。
そう思った私は、彼をすぐに呼び入れ、玄関までお出迎えし、自分で面接室に通した。
ん?なんだ、この匂いは?
なんか臭いぞ?
絶対、臭いぞ!?
まさに臭いぞー!!!
香水の匂いとか、汗の匂いという事でなく、あまり味わった事のない異様な匂いが、部屋いっぱいに広がり始めた。
『少々お待ちください』と、言って、私は名刺をとりにデスクに戻り、息を整えてから、面接室のドアを再び開けた。
開けたとたん、そっとそのまま、閉めてしまいたくなった。
 実物も怖い顔をしてたが、履歴書の写真に目をやると、一流のヤクザ顔が貼付けられていた。
刑務所帰りと言ってもいい感じの雰囲気を、臭いとともに発していた。
 『人相悪いですよねー』と、ギャグってみようかとも思ったが、シャレにならない気がして辞めた。
違う突っ込みはないかと、自分の頭の中に『突っ込み語録。。。』と打って、検索してみたが、画面はずっと検索中の表示のままだった。
 なんと驚く事に、彼は調理人だと話し始めた。
昨年まで、お店を何店舗か経営してたらしい。
『あら、どうしてお店を閉められたのですか?』
「えー、一番流行っていた店舗でノロウィルスを出してしまいまして、しばらく頑張っていたのですが、やむを得ず閉店しました。」
その途端、頭の中の検索中という文字がパッと消えた。
 『お前自身が、ノロウィルスだーーーー!!』(人差し指付き!)
絶妙なタイミングで出てきた。
 しかし、画面下に、“ノロウィルスのためにバイキン扱いされたり、商売がダメになって、苦しんだ人達が沢山いらっしゃいます。”という注意書きも出てきていた。
残念ながら、言えずにお蔵入りである。
 彼の素敵な話と、部屋いっぱいに立ち籠める臭気で、私はいい感じで食欲が減ってきている事に気付いた。
頭の中に、一石二鳥という鳥がバタバタと飛んでいた。
ほんと役に立つ鳥である。

ナイス突っ込み!

面接後、目の周りが真っ黒い社長から毎度こう聞かれる。
『どうだった?』
「とでもなく、、、臭かったです」
すぐさま『お前、そんな奴に、そんな時間かけてたのかー!!』
言われても仕方がない。
ナイス突っ込みだった。
 しばらくして、空腹感が絶頂に達し、私はまっすぐ歩けなくなってきた。
 そんな時に、メールが入ってきた。
おっとっと、280男からではないか。
『ちょっとお話があります。
できれば早い方がいいので、今、お時間をとって頂けないでしょうか。』
今? 今? 今だとオ?!!! とほほほほ
  腹ぺこだよ?ん。
 しかし、どいつもこいつも、勝手な男ばかりだ!
こんな飢餓状態で話を聞いたら、噛み付いてしまうかもしれない。
いや、いくら年上でも、女から手を出すのはまだ早い。
既に回転しなくなっている脳みその中には、アホウ鳥が飛び交っていた。
私は280男を近くの居酒屋『おりん』に連れ出した。
 そして、一番奥の席に座った。
普段から、私には全く話しかけない男である。
一滴の酒も飲まない男である。
私がビールを飲んでいる横で、アロエジュースを飲んでいる男である。
無論、会話もはずむわけがない。
失敗した。(暗くなった)
店員がたまに話しかけてくれるかもしれないカウンターに座れば良かった。(もう遅い) 判断ミスだ。(その通り)
だいたい、280男と2人で『おりん』に来た事自体が、明らかに私の判断ミスだった。
頭の中の鳥が『アホウ、アホウ』と、鳴いている。(ガクン) 臭気のせいだ。
臭気というのは、良くも悪くも確実に人間の判断力まで低下させるものだろうか。
そんな事に感心しながら、私は自分から280男に切り出した。
『で?』 「そろそろかなと思いまして。」 確かに私も、『そろそろだよな』と思った。
と同時に、頭の中に、いかりや長介の『来たか長さん、待ってたぞ!』のフレーズが飛んだ。
いや、別に待っていたわけではない。
実は、280男は、最初に入社した時から1年経ったら、会社を辞めると、断言していたのである。
そう思ったら、今度は急にしおらしくなり、『鶴の恩返し』の鶴になったような気持ちになった。
いや、逆だ! 飛び立つのは280男だ。
280男が鶴?  いや、私が鶴? こんな時に私は、何を考えているのだろう。
そして、280男はこう続けた。
「ちまちました仕事は、そろそろ卒業したいんです。」 げっ! 目ん玉が飛び出るような発言である。
とっさに、私の頭の中は、いかりや長介第2弾『だめだこりゃ?』というフレーズに切り替わった。
ナイスだ!こっちの方が、代表作だし、いい感じにハマった。
ハマッた途端、今度は私の中に『とある力』が、フツフツと湧き上がってきた。
 どの道、この男がボウリングのスコアを言ってきたのが、はじまりだ。
ちまちまだと?
バカにすんなよー!!
鶴が、桃太郎に変身した。(やっぱり私が鶴だった。あはは。)
鬼退治だ。
変態プロデューサー様
『わたくし、今日という今日こそ、やる気になりました。
わたくしデビューします』
少し前に、おひとりさまという言葉がブームになった。
テレビでも、女性が『一人で楽しむ時間』を優雅に演出させるお店が、どんどん紹介された。
 私は、いろんな人にインタビューした。
すると、一人で寿司屋に行ける女。
一人でフランス料理や、懐石料理に行ってコースを食べる女。
一人で焼き肉屋に行って焼く女。
けっこうハイレベルな回答を得た。
ただ、これだけは出来ないという。
ひとりボウリングだ!

自意識過剰女

『おりん』を出ると、雨が降っていた。
はじまりは、いつも雨♪そんな歌があったような。
誰だっけ?
なんか上下に身体を揺すって歌っている情景がぼんやり見える。
チャゲ&飛鳥の飛鳥だ!
重要なポジションのスタッフが抜けるのに、人生、長く生きていると、修羅場の中の自分が意外と心地良かったりする。
昔、かつての心の恋人『キムタク』も何かの雑誌の中でそんな事を言っていた事を思い出した。
私が選んだ一人ボウリングにふさわしい会場は、札幌白石にあるスガイディノスだった。
好奇心旺盛君からメールが入った。
「松川さん、まだ会社にいます?」
『いえいえ、一人ボウリングです。』
「一人で、ボーリングですかー!!どうしたんですかー!!何かあったんですかー!!」
『あのー、ボーリングは、穴掘る方です。』
「穴堀り、僕もしたいですー。」(なんでも興味持つんだな。)
『ダメでーす!』(一人じゃなきゃ意味ないですの。おほほ。)
受付に行って、私は『なんか書くんですよね?』と聞いた。
「あちらの用紙に書いてください」
ひなりんこという名前を鉛筆でしっかり書き、まさに名前にふさわしく、りんとした表情で、私は一名しか書かれてない用紙を、寂しい女と思われない演出をしながら手渡した。
「11番のところに行ってください。」
私は、左肩にバック。
右手に借りた靴を持って、スタスタと与えられた11番のところまで歩いた。
右手側に2名の男がプレイしている。
左手側には、男女含む6名がワイワイと、ボウリングを楽しんでいる。
場所に不足はない。
私は、少しすました顔でバックを置いた。(そんなにジロジロ見ないで。私、一人なの。)
そして、少し気取って靴を履き替えた。(そんなにチラチラ見ないで。後にも先にも誰も来ないから。)
ボウルを探してきて、いったん置き、準備オッケー。(ほらね?私ほんとに一人なの。でも、そんなに上手くはないの。でも、下手でもないのよ。)
心の中でも、息継ぎなく言うと疲れるもんだ。皆さん、試してみなはれ。
そして、第一球。
シマッター↓↓
一番避けたかった事をやってシマッター。
1球目から、思いっきり、ガーターを出してシマッター。(神様、せめて私に、もう少しカッコつけさせてへへへ。横の人が絶対見ていますうう。)
そして、第2球。
ギャオーーン。
またやってシマッター。
笑ってごまかす。
という言葉があるが、人間は一人でも笑ってごまかす動物なのだという事を、この時私は身をもって実感した。
私は、明らかに恥ずかしさをごまかすために、笑っていた。
笑わないでおこうと思っても、ついつい自然と笑ってしまうのである。(見ないで。お願い。一人で笑っている私を見ないで。)
そして、あろう事か、またもや余分な事が私の頭の中をよぎった。
もし、犬が照れ隠しに笑ったりしたら、、、、面白いよなー。。。。
グフグフグフ。
シマッター。ハマッター。(まずい、誰か私を止めて!ダメ、声まで出ちゃう!)
必死に声を押し殺せば殺すほど、お腹がガハガハと波打ち、肩が不気味に揺れ、自力では止められない状態になっていた。
 顔を見られなくても、私は、四方八方どこから見ても、ボウリング場で一人で笑っている女になっていた。
絶対、絶対に不気味な女と思われているに違いない。(そうじゃないのよほほほ。
犬が犬が、ガハハハハーー。)
はあー。。。。笑う事がこんなに辛いとは。
今度こそ!と、第3球。やっと1本。(ちっちゃい。
あまりにもちっちゃい。
お隣さんも、そう思ってますよね?)
気を取り直して、第4球。
2本。(はいはいお隣さん、もう皆さんの視線はこっちに向いてませんよね?)
私って、自意識過剰です?と、神様に聞きながら、第5球。
目を疑ったのではなく、私は自分の耳を疑った。
左の集団から、遠慮がちな小さな拍手。
私は、スト?ライク!を出したのである!(エヘン)
その拍手して良いのか悪いのか分からないような、遠慮した小さな拍手は、確実に私に送られていた。
頭の中に、選挙カーに乗ったおばさんが出てきて、『皆さん、ありがとうございます!ありがとうございます!』と、手を振っているではありませんか。(ごめんなさい、私は、極度なシャイで、そっちを向けないのです。)
えっ? 極度なシャイは、一人でボウリング場に来ませんから?!って?
一人で言って、一人でオチをつける。
いつからこんな性格になったんだろう。
   私は、それから4ゲームをさっさとやっつけて終了した。
 でもあの拍手、ほんとに私宛てだったのかなあ?(違うかも)
鶴が、桃太郎に変身して、桃太郎の後ろには『ちがう鴨の親子』が、ちまちまと歩いて行きましたとさ。

トイレ紙 #11

まじめに考えたら

     まじめな答えが出た

楽に考えたら

     楽な答えが出た

心で考えたら

     感謝された♪

某有名出版社様からの作品講評

『おひとりさまボウリング』は車のトラブル、仕事場での人間関係、数多くの勘違い、そして日常のおかしみ、等々を軽快な筆致で綴った、少なからぬ読者の嬌笑を博するであろうエッセイ集である。著者は北海道で夫と2人の子供に囲まれながら、芸能プロダクションで働くキャリアウーマンである。思い立って初参加したホノルルマラソンを感想する程に好奇心とバイタリティー溢れる著者が、極端に無口な男性スタッフによる唐突なメールに刺激され、一人きりのボウリングに挑戦する。周囲がグループでにぎわう中、自意識の魂となってボールを投げる様子を描写したくだりはことのほか面白く、このエピソードがこの作品のテーマ。
ひいては著者の生き方をも端的に伝えている。
日本社会の現象の一端を表すようなこの行動がそのまま、力のあるタイトル『おひとりさまボウリング』とんっているわけだが、他に『インターネットカフェ自由空間』でオチにしている「『自由空間』でなく『自遊空間』だった。」や『思い出しましたファックス」、「無洗米」が「無精米」に誤植された一件、おばあちゃんのシュールな会話など。著者の言語感覚は舌を巻くほど鋭く巧い。これは自身の大陸的で明るい人間性に因るところが大きいのだろうが、加えて優れた人間観察力を、セレンディピティ(思わぬ発見をする特異な能力)の持ち主だという事実が行間から伝わってくる。
また、著者の職業柄、子供タレントを取り巻くオタクまでが存在し、そんな彼らと微妙な距離感で付き合いをする所属プロダクションの様子など、一般には知られがたい世界を垣間みる楽しみもあった。
さらに、本作品は構成においてもセンスが感じられる。
はじけるリズムに乗った各文章の結末を『(ついてない人生)×(誤解されやすい私)=私』や、『(ついてない人生)×(気苦労)の2乗=私』といった半ば自虐的な表現に統一して締める事によって、上手にまとめ上げている。章と章の間には『トイレ紙』と題するごく短く、オフ ビートな心の吐露を挿入し、著者の内なるシリアスな部分を見せ、全体的に濃淡多様を創出して飽きさせない。中でも『大丈夫という言葉ほど、私にとってはかなく意味のない言葉はない。大丈夫と言いながら、何度一人で戦ってきた事か。』という『大丈夫の嘘』
には共感する読者が多いだろう。個人情報の保護の観点から多少のアドバイスもあるが、育児と仕事と自己表現の多忙な日々を肩肘張らずに送る著者の、なかなか軽妙なエッセイ集に仕上がっている。
是非ともしかるべき形で広く世に問いたいものである。
某出版社の清水様、登場人物、ご関係者の皆様、大変ありがとうございました。
松川日向子

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